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【この芸人を見よ!74】キングコング西野亮廣 嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」- 日刊サイゾー(2010年4月21日08時00分)

 4月10日に放送された『笑神降臨』(NHK)に出演したのはキングコングの2人。テレビでネタをする機会もほとんどなくなった彼らが、客前で堂々と5本の漫才を演じていた。

 キングコングは、デビュー前から現在まで、ずっとスター街道をひた走ってきた芸人である。彼らの芸は、コンビ結成当初から抜群の完成度を誇っており、NSC在学中に出場した「第30回NHK上方漫才コンテスト」で最優秀賞を受賞。プロデビューの前にビッグタイトルを獲得して、お笑い界にその名をとどろかせた。

 その後の活躍も目覚ましいものがあった。『新しい波8』(フジテレビ)の出演がきっかけで、深夜コント番組『はねるのトびら』(同)のレギュラーメンバーに選ばれる。ロバート、ドランクドラゴンといった芸人と共に、若い世代を対象にしたコントで人気を博した。

 そんな『はねトび』は、2005年にはゴールデンタイムに進出。当初は数字が伸び悩んでいたが、小中学生にターゲットを絞った企画の数々で視聴者をつかみ、以後は安定して高視聴率を獲得するようになった。キングコングの西野亮廣は、仕切り役として『はねトび』メンバーの中心的存在だった。彼らはそれと平行して、『音楽戦士 MUSIC FIGHTER』(日本テレビ系)『笑っていいとも!』(フジテレビ系)などにもレギュラー出演していた。

 また、本業の漫才のことも忘れてはいなかった。『M-1グランプリ』では、01年に決勝進出を果たし、その後も07年、08年に決勝に進んでいる。それ以外に、西野はソロ活動にも意欲的に取り組んでいた。舞台の脚本を書き、自作の歌を歌い、1人でトークライブを行い、絵本を描いた。

 ただ、これだけ見事な経歴があるにも関わらず、インターネットの世界で、西野ほど嫌われている芸人はいない。Googleで「西野」の後に1文字スペースを入れると、変換候補の中に「西野 嫌い」というのが出てくるほどだ。

 彼がウェブ上で嫌われる理由はただ1つ。毎日更新される彼のブログ「西野公論」にある。ここで持論をストレートに述べたり、自己陶酔的な発言を繰り返すことで、ネット上でそれが取り上げられ、何度もバッシングを受けてきたのだ。

 それにしても、芸人が数多くいる中で、西野だけがこれほど嫌われるのは不思議な感じがする。彼は、レギュラー番組を除けば、テレビ出演の機会もそれほど多いわけではない。人目につく機会が少ないのに、ネット上の一部の人間は、わざわざ西野のブログを毎日ウォッチして、あら探しに夢中になっているのだ。彼らをそのような行動に駆り立てる原動力はどこにあるのだろうか?

 結論から言えば、西野が嫌われるのは、良くも悪くも彼が「天才」だからだ。コンビ結成5カ月で賞レースを制して、結成1年あまりで『M-1』の決勝に駒を進めてしまうというのは、ただの努力だけでは成し遂げられないことだろう。天才とは、「やってみたら、できちゃった」というタイプの人間のことだ。その意味で、彼が一種の天才肌の人間であるのは間違いない。

 ただ、天才であるがゆえに、彼のキャラクターの背後には、大衆が望む「物語」がない。自分でも認める通り、西野には人並みの野望や野心というものがないのだ。ルックスも悪くない上に、何でも器用にこなしてしまう彼には、コンプレックスをバネにしてがんばりました、という類の「分かりやすいお話」がない。毎日ブログを更新して、コツコツとモノ作りにいそしむ彼は、多くの人にとっては得体の知れないエイリアンなのだ。

 人々は、共感できないものや理解できないものに対しては、一方的にレッテルを貼って処理しようとする。「いけすかないやつ」「ナルシスト」「勘違い野郎」「全然面白くない」......。西野に浴びせられる罵詈雑言の全ては、理解できないものへの恐怖の裏返しだ。

 出る杭は打たれる。西野は、インターネット全盛のこの時代には、打たれるために出てきた杭のような人間である。それでも、彼の芸に対する真摯な姿勢は、周囲の人間を納得させるだけのものを常に備えていた。西野バッシングの裏にあるのは、コツコツがんばる優等生は嫉妬されて叩かれる、といういつの世にも見られる光景なのだ。

 西野の正体は、今どき珍しい、前しか見えない直球人間。梶原という名のサンチョを引き連れて、風車に突進する時代錯誤のドン・キホーテだ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)


※画像は『逢いたくて五反田』R and C Ltd.


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