【連載】本田雅一のクロスオーバーデジタル
本連載の年末恒例企画として、昨年と一昨年は「その年のタブレットを振り返る」というテーマでコラムを執筆してきた。しかし今年は編集部から「2014年の“PCとスマートデバイスをまとめて振り返る”というテーマでどうでしょう?」と打診が来た。このテーマを変更した原稿依頼そのものが、今年のタブレット端末の状況を示しているのかもしれない。
日本市場においてタブレットが急に売れなくなったとか、まったく伸びていないという話ではない。欧米、とりわけ米国市場では必要な人に行き渡った印象はあるが、日本はそこまで爆発的にタブレットの利用が進まなかった。その理由は諸説あるも、いまだによく分からない。
一方でスマートフォンの大型化によるタブレットとのクロスオーバー、小型Windowsタブレットの充実、低価格Androidタブレットがこなれてきたことなど、「タブレットとはこういう製品である」といったカテゴリの分類そのものが、危ういものになってきた。
どのタブレットも主要な目的を達するための機能や性能による差が大きいと言うよりは、「ユーザー体験」の質が大きく異なるのに、すべてを同じタブレットという分野でくくるのは難しく、利用者の裾野が広がることを阻害するかもしれない。例えば、iPad、Windowsタブレット、Androidタブレットの3つを厳密に見ると、同じジャンルの製品としては捉えられないのだ。
本誌の1つの役割が、パーソナルなコンピュータを購入したい消費者が、新たに購入したいコンピュータ製品を選ぶためのヒントを提供することとするならば、これらを「タブレット」「PC」「スマホ」と単純に分類するのではなく、ユーザー体験ベースでジャンルレスに製品トレンドを捉える必要も出てくる。
そんなことを考えつつ、2014年のPCとスマートデバイスを振り返ってみたい。
●実用品と嗜好品の狭間であえいでいたWindows
スマートフォンとタブレットの急速な一般化の中で、(従来からのパーソナルコンピュータという意味での)PCはその存在感を失ってきた……というのが、ここ数年で語られる定番のストーリーだった。しかしこの論旨には以前から疑問がある。スマートフォンもタブレットも、それぞれに便利な道具ではあるが、PCが持つ本質的な価値を代替するものではないからだ。
PCの価値とは、やや大げさに言うならば、人間がその知性によって発揮する創造性、何かを達成するためのアイデアを、より高めるための万能性の高い道具だと思う。もちろん、スマートフォンやタブレットを、そうした目的で簡易的に使うことも可能だし、創造性をサポートするためのアプリも作ることは可能だろう。しかし、スマートデバイスは基本的にアプリケーションサービスを享受する、受け身で使う機器だ。

