[宮家邦彦]【「まずまずの出来」だった安倍首相訪米】~中韓外交的失敗の陰で~
Japan In-depth / 2015年5月5日 0時0分
先週の安倍首相訪米はワシントン・アジア村の日本に批判的な住人にも「まずまずの出来」だったようだ。米議会演説を真正面から批判したのは地元に韓国系有権者を抱えるホンダ下院議員ぐらい。同議員の影響力がゼロとは言わないが・・・。
東京では一部の訳知りが首相の英語を批判していたが、そこはもう趣味の領域だ。「in slow but deliberate English」と書いた米国紙の評価が最大公約数ではないか。そもそも、日本の首相で英語のスピーチができる政治家が一体何人いるだろう。
一部の日本マスコミは面白くないのか、「なぜ米国は安倍をかくも厚遇するのか」ばかり質問する。欧州・中東で米外交が行き詰る中、中韓が外交的失敗を繰り返す一方で、日本が政治・経済で「deliver(有言実行)」するのだから、当然だと思うが・・・。
〇欧州・ロシア
今週も欧州は働いている。特に、9日には戦勝70周年記念式典が開かれ、10日には独首相が露大統領と会談する。一部のマスコミは日米が参加しないことよりも、北朝鮮指導者が欠席することに注目している。この点については後述する。
気になるのはやはりギリシャだ。最近欧州関係者は「ギリシャ破綻は織り込み済み」と楽観視しているが、4月24日付Financial Timesは「欧州でリーマン事件の続編を恐れる米国(America fears a European sequel to Lehman)」と題する寄稿文を掲載し警鐘を鳴らしている。興味のある方は一読されてはどうか。
〇中東・アフリカ
日本では大きく報じられていないが、4月29日にサウジアラビア新国王(といっても79歳だ)が69歳の前皇太子を退位させ、近親の55歳の内相を皇太子に、また国王の息子で30代の国防相を副皇太子に任命したことが内外で波紋を呼んでいる。
一部マスコミはこの異例人事に注目、体制の動揺を懸念する向きすらある。確かにスデイリ系王族が主導権を奪い返したようにも見える。だが、サウジ内政が凄いのはこの人事が王朝内の「コンセンサス」で決まった可能性が高いということだ。
専門家なら誰でも知っているが、ムクリン前皇太子に息子はいない。ムクリンを国王にすれば、逆に国が荒れる可能性もあるのだろう。「同じ穴の狢」たるサウジ王朝は古き良き自民党と同じ、これは「コップの中の嵐」なのか。やはり要注目だ。
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