一転ウォール街におもねる トランプ どこに向かう?アメリカ その4
Japan In-depth / 2016年12月3日 18時0分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
このところアメリカの株価が上がっている。釣られて日本の株価も上昇していることだろう。なぜならドナルド・トランプ次期大統領が、選挙中の立場をひっくり返してウォール街におもねり始めたからだ。
ドナルド・トランプがアメリカの労働者階級の有権者にアピールするスローガンの一つとして、ずっと「Drain the Swamp(泥水を洗い流せ)」というフレーズが使われていた。アメリカ金融街を「泥沼」という言葉で汚職の温床と称し、ベテランの政治家であるヒラリー・クリントンが国務長官退職後に何百万円もの講演代を受け取ってゴールドマン・サックスに招待され、スピーチしていたことを槍玉に上げたり、共和党予備選のライバル、テッド・クルーズの妻がゴールドマン出身であることさえ非難していたのである。自分は既に大金持ちなので、ウォール街に依存する必要はないと自慢し、金融界と癒着する政治家をみんな追い出して見せると豪語した。だからこそトランプ当確で株価が一気に下がった。
だが、それも長くは続かない。トランプ内閣の人事が次々と明らかになるにつれて、トランプがアメリカの金融界をないがしろにするわけがないことが確信できるからだ。元々、トランプ陣営の首席戦略官、スティーブ・バノンはゴールドマン・サックス勤務という履歴を持つ。
そして財務長官には選挙キャンペーンの財務責任者を務めたスティーブン・ムニューチンを指名するとニューヨーク・タイムズが伝えた。彼はかつてゴールドマン・サックスのパートナーだった男。17年の後に退社後、彼の名がニュースに再び登場したのは2008年のリーマン・ショック後のことだった。再就職先のワンウェスト銀行で、(ワンウェスト銀行といえば、差し押さえたマイホームから違法で執拗なやり方で家族を追い出したことで知られている)ムニューチンは「差し押さえ王」という異名をとり、サブプライムローンで家を失った人たちがカリフォルニアの一等地ベルエアにある彼の邸宅の周りで連日デモを繰り広げたのだ。
トランプは今、自宅のあるニューヨーク五番街のトランプタワーに閉じこもり、次々に参勤交代でやってくる大臣志望者を面会している。その中には、ゴールドマン・サックス現取締役のゲイリー・コーンの姿もあった。アメリカではリーマン・ショック後、金融業界の不始末のせいで再びマイホームを追い出される人が出ないように2010年にドッド・フランク法(ウォール街改革及び消費者保護法)が定められたが、トランプ就任後、この法律が撤廃される可能性が高い。
ウォール街との癒着を断つ、という公約を信じて彼に一票を投じた者はどう感じているだろうか。株価が上がり、自分たちの401K(確定拠出年金)の額が目減りしなければそれでいいのだろうか。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
どれだけ自民党が嫌いでも、「無能な野党」しか選択肢がない…米政治学者が憂う「日本政治の機能不全」
プレジデントオンライン / 2024年4月13日 7時15分
-
アングル:米大手行第1四半期は軒並み減益か、純金利収入の動きに注目
ロイター / 2024年4月11日 13時12分
-
「トランプ空港」誕生か!? 「政治家名がついた空港」実は海外だと一般的 人名が変わった空港も!?
乗りものニュース / 2024年4月5日 16時12分
-
国の借金に限界はあるのか!?
トウシル / 2024年4月4日 17時5分
-
保証金減額でもトランプの綱渡りが続く理由──預金口座や不動産の差し押さえリスクは続く
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月26日 15時35分
ランキング
-
1トランプ氏「麻生氏は素晴らしい人」「偉大なシンゾーを通して知り合ったんだ」麻生太郎副総裁と会談
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年4月24日 9時59分
-
2米議会の対外支援法案可決、台湾総統が歓迎 中国反発
ロイター / 2024年4月24日 16時39分
-
3人口減少は日本の最大の戦略課題=有識者の提言で林官房長官
ロイター / 2024年4月24日 16時58分
-
4タイ・バンコク近郊で日本人男性の切断遺体 日本人2人が事件に関与か
日テレNEWS NNN / 2024年4月24日 12時45分
-
5TikTok、全米で「禁止」 上院法案可決、成立へ
共同通信 / 2024年4月24日 12時6分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください