トランプ外交の危うさ急浮上
Japan In-depth / 2016年12月6日 0時54分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(12月5日-11日)」
今週は突っ込みどころが満載だ。まずはトランプ外交から。トランプ氏の台湾・蔡英文総統との直接電話にはさすがに驚いた。勿論、偶然のはずはない。周到な準備なしには実現しない、確信犯的な行動であることは間違いなかろう。ここにトランプ外交チームの危うさを感じるのは筆者だけだろうか。
中国側は、文字通り、慌てふためいたのではないか。王毅外交部長は「台湾側の小細工」だと切り捨てたが、彼の表情は怒りと焦燥感に満ちていた。彼の責任ではないが、中国外交にとっては大失態だろう。トランプ氏の言動は、中国側が理解する1972年以来の米政府の立場を逸脱しかねないものだからだ。
筆者の見立てはこうだ。トランプ氏は外交安保問題に深い関心を持たず、そこには「知的空白」がある。しかし、共和党系のまともな外交安保専門家が新政権の中枢に入っている可能性は低い。されば、トランプ政権の外交安保政策は誰かに乗っ取られつつあるのではないか。詳しくは今週木曜日の産経新聞コラムを読んでほしい。
〇欧州・ロシア
4日、イタリア首相が自ら仕掛けた国民投票で憲法改正案は大差で否決され、同首相は辞意を表明した。これは同国での極右の動きとは直接関係のない、単なる同首相の政治力不足、判断ミスの結果ではないかと思う。いずれにせよ、英国のEU離脱で国民投票を仕掛けた前英首相と同じ末路だ。政治家が弱くなったということか。
ただし、これでイタリアの総選挙も早まるので、反ユーロを主張する「五つ星運動」などが躍進する可能性も残っている。まだまだ、油断は禁物だろう。一方、もう一つ注目されたオーストリア大統領選挙は、対抗馬だった極右の候補を振り切り、リベラル系緑の党の元党首が当選した。これが欧州の良識だと信じたいのだが・・・。
〇東アジア・大洋州
9日に韓国議会が大統領弾劾の採決を行う可能性があるらしい。それにしても、韓国の大統領は何と哀れなことか。これまで誰一人として、元大統領としての威厳と矜持を保った政治家はいないではないか。韓国のマスコミは同国の前近代的、封建主義的政治状況を憂いているが、そのマスコミの責任も小さくないのではないか。
現在ジャカルタで、中国が主導する多国間貿易交渉RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)が開かれている。TPPは当分動きそうにないが、これを廃棄してはならない。せめて塩漬けか、フリーズドライにできないものか。捨てるのはあまりに勿体ないと思うのだが・・・。
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