金正男暗殺実行犯「アイシャ」を救え!
Japan In-depth / 2017年2月20日 19時5分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・アイシャ容疑者逮捕でインドネシア国内世論沸騰
・アイシャは陰謀の被害者だと同情論が急拡大
・インドネシア世論は一気に「反北朝鮮化」
北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄にあたる金正男氏(45)がマレーシア・クアラルンプールの国際空港で2月13日に暗殺された事件は、インドネシアでは当初金正男氏の正体があまり知られていないことやジャカルタ特別州知事選(2月15日投開票)の報道などに埋没してほとんど関心を呼ばなかった。
ところが殺害実行犯としてマレーシア警察当局に逮捕された女性の1人がインドネシア国籍と判明すると、新聞やテレビ、ネットで一斉に事件とその関連が報道されはじめ、今や国民の一大関心事となっている。
地元紙は金正恩委員長の血縁関係を示す系図、政治的地位と政権の構図を表す図表や写真を掲載して、「北朝鮮という特殊な国」の実情を次々と伝えている。逮捕されたシティ・アイシャ容疑者(25)のジャカルタ市内の自宅、ジャワ島西部の実家に暮らす母親や親族などの声も連日のように伝えられている。
そのインドネシアメディアの報道姿勢は当初の事実関係の報道から、「アイシャは国際的な陰謀の被害者」との位置づけに変化してきており、「アイシャを救え」という論調が強まっている。
■日本のテレビ番組と騙された?
マレーシアの捜査当局やアイシャ容疑者の親族などの証言から今回の「暗殺」にベトナム国籍のもう1人の女性とともに関わったアイシャ容疑者は、「日本のテレビ番組への出演」という依頼を受けていたという。
その番組については ①マレーシアで見知らぬ人に突然背後から目をふさいだり、スプレーを正面から吹き付ける「いたずらビデオ」への出演依頼 ②「香水を見知らぬ人に振りかける香水の宣伝番組」への依頼などとみられている。
インドネシアやマレーシアではいわゆる日本の「ドッキリカメラ」的な番組の人気が高く、アイシャ容疑者も1回100米ドルの出演料で依頼を受け、インドネシアやマレーシアで何度か同様の「ビデオ撮影」に協力していたことが分かっている。
このため事前の収録では「実際に香水をかけていた」が、金正男氏のケースは香水が殺傷の力のある薬物に変わっていて「実行犯の女性2人にはそのことは知らされていなかった可能性」が高いとみられている。
アイシャ容疑者に直接接触して「いたずら」を依頼した人物については「これまでのところ中国人か日本人か判明していない」と捜査当局は明かしている。
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