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昨年に比べて大幅減の司法試験合格者 その理由と司法試験の今後について

JIJICO / 2016年9月17日 15時0分

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昨年に比べて大幅減の司法試験合格者 その理由と司法試験の今後について

理想と違う結果をもたらした新司法試験制度

 
弁護士・裁判官・検察官になるための「関門」である司法試験の制度が新しくなって11年目を迎えた今年、合格者数は1,583人と発表され、前年の1,850人から267人も減ったことがわかりました。

一昔前までは年齢や学歴に関係なく誰でも受けることが出来た司法試験ですが、新しい制度のもとでは原則として「法科大学院(ロー・スクール)」を卒業しなければ司法試験の受験資格を得られません。
大学卒業後、2年間(法学既習者)あるいは3年間(未修者)、大学院での学業を修めないと、司法試験の受験資格が与えられないのが現行制度です。

法科大学院のカリキュラムはかなり厳しいので、バイトなどをやってる時間はありません。
そのため、法科大学院に通うため、最低2年間の生活費は当然のこととして、学費や教材費など多額の「教育資金」が必要になります。
私学の場合、学費が年間200万円を超えるところもあり、法科大学院生の多くは「奨学金」など多額の「借財」を背負っていると言われています。

新司法試験制度が始まって第一回目の試験の合格率こそ48.25%と高率でしたが、その後は合格率が年々下がる傾向にあり、今年は22.95%(前年比0.13ポイント減)にまで落ち込んでいます。
アメリカのロースクール並みの合格率(7~8割程度)を目指した制度設計も、ここに来て失敗であったことが明らかとなり、毎年3,000人もの司法試験合格者を輩出する予定だったのが、今では1,500名ほどが「精一杯」となりました。
最盛時で74校あった法科大学院は、私が知る限り既に32校が新規募集を停止しており、ほぼ半数に近い法科大学院がいずれは「廃校」という運命にあります。
法科大学院の人気低下にますます拍車がかかることはあっても、人気回復はもはや絶望的と言えるでしょう。

就職難により弁護士志望者の減少が続いている現状

「法科大学院離れ」の原因が司法試験の合格率低下にあるという意見もありますが、現実の問題として年間2,000人の合格者を受入可能な「法曹需要」は存在せず、特に弁護士志望者の「就職難」がずっと続いていることが大きく影響しています。
合格者数を1,500人に下げたところで「就職難」はさらに続くと予測されており、たとえ弁護士登録が出来た場合でも、早い段階で「廃業」を余儀なくされる若い弁護士が増えているのが法曹界の現状なのです。

多額の費用と貴重な時間を費やして法科大学院を卒業しても年間20%前後しか司法試験に合格出来ませんし、仮に合格して一年間の司法修習(現在は無給)を経ることが出来たとしても、無事に就職出来るとは限りません。
従って、「費用対効果」の面から考えた場合「法科大学院離れ」が進行するのはやむを得ないところです。
法曹志望者全体が年々減少の一途をたどっており、いずれ法曹界には優秀な人材が集まらなくなることが懸念されています。

司法試験で注目されている予備試験組からの合格者

ところで、今年の司法試験合格者1,583人のうち、法科大学院を修了しなくても受験が可能な「予備試験」を経由した合格者数は235人(前年比49人増)で、合格者全体の15%程を占めています。
そしてその合格率はなんと61.5%という驚異的なものです。
この「予備試験組」の多くは現役の大学生(法学部生)や法科大学院生であり、予備試験が法科大学院制度の「バイパス」となり、司法試験合格への「ショートカット(近道)」になっているのが現状です。

既に法曹界内部では「予備試験組」に注目する動きがあります。
現行制度のもとでは、大学を卒業して最低2年間は法科大学院で学ぶ必要がありますが、大学在学中に予備試験に合格出来れば、この2年間を省略して司法試験の受験が出来ます。
しかも、合格率は法科大学院卒業生よりかなり高率であり、若くして司法修習に進むことも可能だからです。
「若くて優秀な人材」が注目されない理由は何処にもなく、就職にあたり「法科大学院組」より「予備試験組」の方が有利であることは言うまでもありません。

今後、法科大学院の「淘汰」がますます進んで、結局のところ「市場原理」に従い「合格率上位校」のみが残ることとなって、「予備試験組」と「しのぎを削る」状況になるのではないかと考えられています。

(藤本 尚道/弁護士)

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