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厳重な防犯態勢でなぜ!?「まんだらけ」騒動を現役万引きGメンが総括

TABLO / 2014年8月29日 14時5分

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Photo by まんだらけ公式ホームページより

 

 古物商「まんだらけ 変や」における鉄人28号盗難事件で、犯人の男が無事逮捕された。警察が百五十店にも及ぶ古物商に聞き込み捜査を行った結果、同じブロードウェイ内の古物商に盗まれたモノと同型の鉄人28号が持ち込まれていたことが判明。その後、被害品であることが確認されて、自らの身分証明書を差し出した上で盗品を売却していた犯人の逮捕に至ったという流れである。

 逃走事案や事後強盗事案などは別であるが、通常の万引き事案において、ここまで大規模な捜査が実施されることは珍しい。事件が長期化すれば、なにを言われるかわからない。様々な批判と圧力を受けて追い込まれた警視庁と中野署の意地が、早期解決の結果を導いたといえるだろう。今回は、様々な観点から、この騒動を総括してみる。

 容疑者が任意同行された当日、偶然にも被害店舗の視察に出向いていた筆者は、同店のセキュリティレベルを確認するとともに犯行手口を検証していた。まず初めに、被害品が陳列されていたというショーケースを見てみると、電子制御された最新の防犯機器が導入されているのがわかった。

 多くの被害現場に立ち会ってきた筆者も、この防犯機器が破られた事例に接したことは皆無で、その突破法が掲示板などに公開されている事実もない。さらには、三台のドーム型カメラがショーケースの周囲を取り囲むような形で設置されており、その画像はカウンター内のモニターで確認できる状況にある。通常通りに警戒されていれば、絶対に盗まれることのない陳列状態といえるだろう。ほぼ完璧といえる防犯態勢が構築されている店内で、希少で高価な商品が盗まれた事実が重い。

 そこで犯行手口を考えてみたところ、商品を盗み出す方法がひとつだけ見つかった。しかし、狭い店内で誰にも気付かれぬよう実行するのは難儀で、現実的な手口とはいえないレベルの発想だ。それに、防犯カメラの配置を考えれば、かなりの勇気も必要になる。そうしたことを居合わせた店員さんに話しつつ、用いられた犯行手口について意見交換してみると、人為的なミスがない限り盗めないという結論に達した。

 逮捕された犯人の供述によると、ショーケースのガラスが開いていたことから、衝動的に商品を盗んだらしい。おそらくは他の顧客が商品を購入するなどした際、担当した従業員が中途半端にガラスを閉めたか、施錠することを忘れてしまったのだろう。

「まんだらけ」のような専門店は常連客が多く、盗難被害に遭いにくい反面、そうした日常が一瞬の油断を生んでしまうこともあるのだ。いずれにせよ、その一瞬の隙を見逃さずに犯行を成功させた犯人の嗅覚には瞠目するばかりで、犯行の瞬間を捉えた防犯カメラの動画を見てみたい気持ちにさせられた。

 また、犯人の男は自分の趣味であるウルトラマンの怪獣フィギュアを買いたかったことを理由に、換金目的で鉄人28号を盗んだと供述している。それならば何故、ウルトラマンの怪獣フィギュアを直接盗まなかったのか。

 その心理は計り知れないが、きっと商品に対する歪んだ愛情があるのだろう。そうなると、そこまでして手に入れたかったというウルトラマンの怪獣フィギュアが、何だったのかも気になってくる。どうでもいいことだが、犯人の顔写真を見たいという気持ちよりも、そうしたことに対する興味の方が強いのだ。

 結局、逮捕されたことによって顔写真を報道された犯人は「鉄人28号を盗んだ男」という生涯消えないレッテルを背負うことになった。もちろん自業自得の結果で、同情の余地もない話だ。それどころか、どうせ顔写真が晒されることになるのであれば、積極的に公開して事件の早期解決に役立てるべきだという意見も多い。確かに、一定の条件を満たした被疑者の写真を公開することが、万引き防止対策の切り札になる可能性を秘めていることは事実だ。

 しかし、あからさまな犯人探しや安易な晒し首が横行してしまえば、多くの冤罪や差別を生み出すことにもなりかねない。過剰なまでに人権が尊重される昨今、新たな防止対策が進めば進むほど問題が噴出して、一向に進まないのが万引き犯罪の現状なのである。

 日本全国における年間の万引き被害総額は、推定四千五百十五億円(平成二十四年)といわれ、たかがでは到底済まされないほど甚大で深刻な経済損失を生み出している。この騒動をきっかけに万引きに対する意識が高まり、効果的な万引き防止対策が実施されることを願いたい。

Written by 伊東ゆう

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