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女王蜂『奇麗』インタビュー(後編)

NeoL / 2015年3月27日 1時57分

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女王蜂『奇麗』インタビュー(後編)

女王蜂、約3年ぶりのフルアルバム『奇麗』。アヴちゃんが自身の恋愛を赤裸裸に描いた歌詞は恐ろしいほどに率直で優雅である。さらにその恋愛という普遍的なテーマを聴く者ひとりひとりの脳内で“僕の/私の歌”に転換させるポップさ、それを支えるバンドサウンドの跳躍——すべてが群を抜いた紛れもない傑作。


(前編より続き)

——今作はヴォーカルにも驚きました。

アヴちゃん「女王蜂の前知識なく今回のアルバムをパッと聴いて、全部同じ人の声ですって言われたらめちゃ驚くやろな(笑)。何人かおるよなあって。1人だよー、1人デュエット(笑)」

―地声をかなり出していたけれど、前に人格で声が変わるということを言っていたから、そういった意味で地の声が大きいということはひとつ大きなポイントかなと。

アヴちゃん「ああ、地声がセンターにいる感じよね。確かにそうかも」

―素の自分を出そうという思いがあったのか、それとも単純に音的なはまりだったのか。

アヴちゃん「音なのかな。そんなに意識はしてない。そういうことは人に言われて初めてああと思うけど、大きかったのは”始発”と”髪の毛”の歌入れの時に涙が出た自分。今までどんなことがあっても歌入れの時に涙なんか出なかったのに。録ってる時期が恋愛中で色々あった最中というのもあるけど、それでも自分にすごくびっくりした。レコーディング中に泣く自分に『うわっ、素人!』って悔しい気持ちもあったけど、仕方がないからそこも活かして録ったところもあるし」




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―なるほど。私の勝手な解釈では、女の子の方のアヴちゃんがもう無理ってなって、それを男の子の方が支えてくれてるのかなって。でもそういう感じでもなくて、湧き出てくるものを流したらああなったんですね。

アヴちゃん「女性らしい声でしゃべっといて普通に綺麗なお姉さん風に生きるってこともできるやんか。でも地声でしゃべれない限り自分の中で腹が割れないとしたら、女性声の私に寄ってくる人もきっと腹は割ってないよね。音楽で腹割りたいとかそういう云々もないけど、いいものを作るためには何も厭わない。昔の女王蜂もそうやったやん。人が引くところで行くみたいなとことかあったけど、休止も挟んで、今回久しぶりにRECして、音楽やるのが楽しいなと思いだしてきて、より厭わなくなったかな。多分、もう私1人の話じゃないんやと思う。女王蜂なんだろうな。私はきっとすごく探してるんだと思うんだよね、無意識に。自分が音楽をやる意味とか全然どうでもいいし、色々どうでもいいけど、死ぬまでに見つけたいって気持ちがすごくあるから手段を厭わない。今はとにかくずっと音楽のこと、女王蜂のことを考えて、探してる。『あ、ここの音、BからAに下げるだけで』とか、『あの転調はフラットにするよりもシャープかも、逆に3フラット?』とか、こうやってしゃべってる段階でずっと考えてる。バンドモードとか、なんとかモードみたいなのはない。女王蜂は楽屋から女王蜂やし、楽器渡されてすぐ行けるし、車で入った瞬間でもやれるし、ずっと女王蜂なの」

——厭わないがゆえの生感もすごい。

アヴちゃん「うん、今回”ヴィーナス”があって“売春”がある。ヴィーナスが売春をするっていうので、不思議な距離に降りてきたというか、いるなって感じがするよね」

―恋愛の、そして別れのアルバムだけど、”緊急事態”の最後は明るくて希望がありますよね。

アヴちゃん「”始発”のあとは”緊急事態”って決めてたの。2つで補完されてた」

―ですよね。”始発”は聴くのがいい曲だけど揺らされるから苦しくて、それが“緊急事態”で救われる。

アヴちゃん「“始発”いい曲よね。飛び込んでこいと」

―うん。1個1個の歌詞の完成度の高さは、本当に天才だと思う。

アヴちゃん「ほんま? やったー。書いといてよ、天才だって。『紺色淡く 手放す空』、『甘え倒してたから』とか、いいよね」

―”折り鶴”もすごいけど、あれはショッキングな内容でまたちょっと意味が違う。”始発”は普遍的内容だからこそあそこまで描けるのはすごいと思った。

アヴちゃん「”折り鶴”はニュースだよね。うん、確かに今回すごいって言われるのは普遍性かな。今若くて才能のある子がいっぱいいて、もうどうしましょって。戦えもしないし、かといって引くのかって言われてもわかんないから……普遍性かな。ふと浮かぶメロディー、言葉とかが明日になっても素敵なものがいい」

―でも決して守りに入ってる普遍性じゃないのが女王蜂だと思います。王道もできるんだけど、さっきの変調じゃないけど、変なところが随所にある。逆にそのひっかかりがないと普遍性って生まれないような気がするし、それができてるのはすごいなって。

アヴちゃん「やった。拍手もらいました! 自分が好きなものとかいいなって思うものに当たると『うわあ! なんやこれ!』ってなるやん? でも今って、例えばよく音楽を聴くスタッフの子とかと話してると、『あ、次の曲きっとこういう曲だろうな』と思うとアーティストがその範疇のものをちゃん突いてくれるんだって。エレクトリックなことをやってる子が、その中でのスタンダードであるかもしれないけどばっちり当たってるものを推してきて、聴く方もそれが気持ちいいというか。次のあのアルバム良かったよ、こうきたから良かったよね。って。そういうのが“今”の“良い”みたい」




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―YouTubeとかで横におすすめ一覧が出てきて、自動的にそこに運び込まれるみたいなね。

アヴちゃん「うん、今はオートマティックで誰にでも親切な時代。でも女王蜂とか私はオートマティックじゃなくて、なんていうんだろう……面倒くさいじゃない?」

―わたしはその親切が怖い。思考停止するし、先が見えてたら感情の振り幅だって決まってしまうけど、そこを覆してくれるのがものすごく素晴らしいもので、そういうのは大抵面倒なんじゃないかな。

アヴちゃん「ずっと後頭部殴打されているようなアルバムだと思う。殴打っていうかこう、ヒュッヒュッて(笑)」

―耐えられない人は耐えられないですよね。

アヴちゃん「しかもポップに耐えられない!(笑)」

―私も持って行かれすぎて、ちょっと息を整えさせてくださいって意味での耐えられなさはありました。

アヴちゃん「ポップだからそうさせたんだよ。エキセントリックな感じなら、ああエキセントリックねって感じに流せるけど……自分が見えちゃうんだと思う。昔、美輪(明宏)さんを叩いた人って、美輪さんにドキドキしていた人だと思うの。恋愛対象に見た人だと思うんだよね。そういう自分が許せなかったから叩いたんだよ」

―自分の中の羞恥だ。

アヴちゃん「そう。魔女狩りを最初に始めたのって魔女やと思うの。例えばジェンダーのことで言う時も、撲滅やとか手を挙げてひどいこと言ってる人は全部最初は自分がそうだったんじゃないかな。自分の中でそういう部分があってもそれを認められなかったり、そういう自分を出してる人が羨ましかったり、自分だけおいしく生きたいとか。みんなそうだと思うから、この作品が無理っていう人もいていいと思う。」

―『奇麗』というタイトルに関しても聞かせてください。”髪の毛”の歌詞では『綺麗』なのにタイトルでは『奇麗』の方になってて、そこに意味があるのか知りたくて。

アヴちゃん「”奇麗”の方でも通じるわけやんか。多分、綺は糸をつけて奇を希釈しんやなって思う。それくらい奇麗って、奇妙で麗しい、麗しすぎて奇妙っていうこと。美しすぎて周囲より頭1つ飛び出ちゃうくらいつらいことで、ある意味哀しいことでもあるというか。せやけど、それだけじゃ強すぎるから綺麗にして薄めたんじゃないかなと思って。でも自分が出すとしたら薄められないから、奇麗の奇にしたの」

―まさにアヴちゃんそのもの。

アヴちゃん「そうね」

―そして女王蜂そのものなのかもしれない。

アヴちゃん「有限だから、ポーズをとってる暇はないの。アルバムを出すということは、自分たちにとってどういうことなのか。SNSでいいねって言われるために作ってるわけじゃない。SNSって画廊やと思うの。1人1人がキュレーターというか。ずっと下ネタとか言う子、食べ物ばっかり載せる人とか、自撮りばっかり載せる人とかもそうやけど、今はセルフィー時代やん? 音楽を聴くことも自己ブランディングの1つだとして、今はそれが顕著な時代になってるわけよ。噂の誰かに会いました、とか。行ったことを人に言うことで初めて補完されるものがあるけど、みんなの歌を作るということは、補完という感じじゃなくて自分の中でずっと熱量高く持っておいて欲しいな。私自身もそんな風に音楽を聴いてきたし、もしよければそういう風に聴いて頂けたら嬉しいな、なんて思う。今を、自分をどういう風に見せたいとかを考えずに求めるメロディーでありたいし、元気になるものとか普遍性のある音楽でありたいと思う」

 

撮影 中野修也/photo  Shuya Nakano

文 桑原亮子/text  Ryoko Kuwahara

 


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女王蜂『奇麗』

3月25日発売

◆初回生産限定盤<CD+DVD>


3,889円+税


*完全オリジナル映像作品「残酷」(DVD/収録時間:45分)


*アヴちゃんオリジナル小説「残酷」


*特殊パッケージ:紙ジャケット


http://www.amazon.co.jp/dp/B00TZ049VC


http://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?cd=AICL000002851


◆通常盤(CD ONLY)


2,778円+税

http://www.amazon.co.jp/dp/B00TZ041QA

https://itunes.apple.com/jp/album/qi-li/id967156563

http://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=2845&cd=AICL000002853

 

女王蜂

2009年神戸にて活動開始。2011年3月に初の全国流通盤アルバム『魔女狩り』をリリース。同年9月、アルバム『孔雀』でメジャーデビュー。収録曲“デスコ”は映画『モテキ』のメインテーマに抜擢され、映画にも出演した。2012年5月、メジャー2nd『蛇姫様』をリリース。2013年2月より約1年間の活動休止期間を経て、2014年より女王蜂の活動を再開することをアナウンス。2月22日に渋谷AXで復活ライヴ「白熱戦」を行い、その後単独公演「灼熱戦」を各地で開催。2015年1月スタートのテレビ東京系ドラマ「怪奇恋愛作戦」のオープニングテーマを担当することでも話題に。NHK「あさイチ」に出演し、世代を超えた新たなファンも獲得。2015年4月より『奇麗』リリースツアー「女神たちの売春」を敢行。


http://www.ziyoou-vachi.com/


 

 

「女神たちの売春」

   2015年5月17日(日)札幌PENN YLANE24


〔問〕マウントアライブ 011-211-5600


チケット発売日:4月11日(土)


   2015年5月20 日(水)名古屋Electric Lady Land


〔問〕JAILHOUSE電話 052-936-6041


チケット発売日:4月11日(土)


2015年5月22日(金)大阪・umeda AKASO


〔問〕YUMEBANCHI 06-6341-3525


チケット発売日:4月11日(土)


   2015年5月24日(日)福岡DRUM Be- 1


〔問〕キョードー西日本 092-714-0159


チケット発売日:4月11日(土)


   2015年5月31日(日)広島Cave-Be


〔問〕YUMEBANCHI(広島) 082-249-3571


チケット発売日:4月18日(土)


   2015年6月5 日(金)仙台MACANA


〔問〕ジー・アイ・ピー  022-222-9999


チケット発売日:4月18日(土)


2015年6月27日(土)東京・赤坂BLITZ

〔問〕DISK GARAGE 050-5533-0888

チケット発売日:5月23日(土)

 

チケットオフィシャル第二次先行受付】 ※抽選制

■オフィシャル先行

【期間】3/25(水)12:00~4/2(木)18:00
【URL】 http://eplus.jp/zv15/ (PC・携帯・スマホ)

関連記事のまとめはこちら


http://www.neol.jp/culture/

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