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わが子を絶対ニートにしない進学コース20【1】

プレジデントオンライン / 2014年4月25日 9時45分

豊田工業大学(愛知県) 18年連続で就職率100%達成。体験的教育を重視しており、学内には工作実習工場や半導体の研究用施設などを持つ。

1991年の81.3%をピークに、20%近く下落した就職率。不確実な時代、確実に就職する方法とは。

大学卒業者のうち5人に1人はニート、フリーターとなる。親からすれば「高い学費を払って、わが家の不良債権になるなんて」と思うだろう。

文部科学省の学校基本調査によると12年3月卒業者に占める就職率は63.9%。大学院等進学率が11.8%、専門学校などへの進学率が2.0%。残り22.3%のうち、臨床研修医などを除けば事実上、ニートかフリーターになったとみていい。

では、偏差値や知名度の高い大学ならいい就職先があるか、といえばそれほど単純ではない。確かに偏差値・知名度の高い大学は低い大学よりも就職状況はいい。それでも、一定数はニート、フリーターに転落する。しかも、近年、人事関係者を悩ませているのがメンタルヘルスが原因による早期退職である。

「優秀だと思って一流大学の学生を採用したら、人間関係をうまくつくれない。あるいは心を病んで入社後、数年以内にやめてしまう」(機械メーカー・人事)

これではせっかく就職しても、ニート、フリーターになるのと大差ない。

わが子を「不良債権」にしないための進路はどこか。就職時だけでなく就職後にも役立つ力を身につけられることで定評があり、高い就職実績を誇る学校を紹介しよう。

「トヨタ設立なのに、ホンダやスズキなどの同業他社に就職していく大学」として自動車業界関係者の間では有名な大学がある。それが豊田工業大学だ。

トヨタ自動車が寄付金を出して1981年に社会人大学として設立。93年から一般学生の受け入れを始めた。95年からの就職先を見ていくと、1位にトヨタ自動車、3位にデンソー、豊田自動織機。以下、アイシン精機、ダイハツ工業などトヨタグループへの就職者が目立つ。

だが、2位に本田技研工業が入り、スズキ、日産自動車などの同業他社、さらに三菱電機、キヤノン、パナソニックなど電機メーカーへの就職者も多い。本田の場合、就職者が多いため、同社の担当者が求人票を持って挨拶に来るほどだ。

トヨタ以外の企業に就職することを大学もさほど気にしていない。榊裕之学長も「一定数、ライバル社などに就職できるのはむしろ健全な表れと考えています」と話す。

外国人博士、留学生も多く、交流もさかん。

認めるのはライバル企業や電機メーカーだけではない。同大は日本で唯一、就職率100%を誇る。2012年卒業者も学部72人中、47人が大学院へ進学、25人が就職した。これで18年連続で就職率100%を達成したことになる。

その理由は全寮制と長期間のインターンシップにある。同大では1年生の男子学生に寮生活が義務付けられる(女子学生は希望者のみ)。寮では「ユニット」という単位に分かれ、2、3年生の先輩学生1人、アドバイザー教員2人と新入生8人が生活を共にする。

1年生といっても同じ年代ばかりではない。社会人大学として開学したため、現在でも20人前後は企業から派遣されてきた社会人学生がいる。彼らは高卒ないし高等専門学校卒で入社。その後、企業から派遣されて入学するケースが大半だ。年齢は20代前半、一般学生に比べて年上である。

一般学生は、センター試験で国立の名古屋工業大とほぼ同レベルの点数を取らないと合格できない。一般学生は当初、社会人学生のことを内心ではバカにしているという。

ところが、社会人学生は努力して這い上がってくる。勉強だけではない。寮は個室だが、食事はユニット単位でつくることになり、ここでも違いが出るという。

「勉強や生活の知恵、それに遊びも社会人学生のほうが上。次第に一般学生は社会人学生をバカにせず、苦楽を共にするようになります。寮生活によって、社会人基礎力は相当鍛えられるでしょう」(齋藤和也教授)

料理を覚えると、段取りができるようになり、コスト感覚も鍛えられるという。他大学から来た教員は実験の段取りのよさに驚くそうだ。

インターンシップ(学外実習)では合計9~10週間、トヨタグループや電機メーカーなどの工場で実作業を体験する。「日産自動車を受けたとき、トヨタの生産ラインで研修した話をすると採用担当者が食いつき、内定に至った」(学生)とのエピソードもあるほどだ。

寮生活、インターンシップと社会人との接点は山ほどある。鍛えられたコミュニケーション能力が就職実績に反映されるのは当然といえるだろう。現4年生からは初めて、総合商社への内定者も出た。

「商社も工学部出身者が重用される時代。今後も数%は行かせたい」(榊学長)

■授業で自治体向けのITシステムを構築

公立はこだて未来大学(北海道) 
就職率96.4%! 7割が首都圏へ。開学は2000年。校舎のコンセプトは「オープンスペース、オープンマインド」。講義室や教員の研究室の壁は透明で、中の様子が外からわかる。

「農家相手にツイッターの話をしても通じなかった、と学生が途方に暮れたこともあります」

こう話すのは、公立はこだて未来大学の就職委員会委員長・大場みち子教授。同大では3年生全員が1年間かけて参加する「システム情報科学実習」という科目がある。まず、教員がグループをつくりテーマを設定。そのテーマを教員が学生にプレゼンし、学生は参加テーマを決める。教員1人につき学生5人が目安だ。

2011年、大場教授のテーマは近隣自治体の公共施設予約システムの構築だった。参加した学生はツイッターを活用しようとして近隣住民にヒアリングしたところ、全く通じなかった。学生同士で通じるだけではダメ、と否でも応でも社会の厳しさを知ることになる。

施設予約システムの構築などは通常、IT企業が有償で請け負う話。だが、教育の一環なので代価は発生しない。

「いくらお金が発生しなくても、作業が遅い、相互理解がうまくいかないなどの理由で、学生は学外の人にも結構怒られます。こうした点も含め、社会人生活を先取りする体験ですね」(大場教授)

7月と12月に発表するほか、同じ内容を9月と2月に学外(札幌と東京)でも発表する。

「リーダーの学生が途中で交代することもある。それくらい実社会に近い」(大場教授)

このプロジェクトによる学習の成果は、就職実績にも反映されている。12年卒の就職率は希望者ベースで96.4%。

「学生は7割が北海道内出身です。しかし、就職先は7割が首都圏の企業です。大学でもサテライトオフィスを秋葉原に設置し支援しています」(高木幹彦・教務課学生支援・就職担当主査)

■TOEIC平均点が入学時から278点UP

宮崎国際大学(宮崎県) 
外国人教員比率日本一の83.9%外国人教員1人当たりの学生数も日本一の10.2人。すべての授業が英語で行われる。

早稲田・慶應など難関大を除けば、文系私大の学生の英語レベルは「英検だとせいぜい3級で2級より上は少数派。中堅以下・地方私大だと4級がいいところ」(英語参考書編集者)といわれている。

ここで紹介する宮崎国際大学も、2009年入学者のTOEIC平均点は350点にすぎない。付言すれば同大は19年連続で定員割れである。定員割れの私大は全国の私大のうち、約4割。こうした私大にはやる気のない学生が集まり、さらに学力が落ちる。やる気のある少数の学生は他大学に逃げる、と悪循環に苦しむ。最悪の場合、募集停止になることも。

ここまでは地方私大ならよくある話だ。同大が素晴らしいのは、ありがちなTOEIC対策を一切せずにTOEICの点数を引き上げていることだ。09年入学者は3年次の平均が570点、卒業時点では平均で628点にまで上がった。700点以上の学生は全体の3割、うち2人は900点を超えていた。

TOEIC問題集を解かせるわけでもなく、なぜ学生は点数を上げられるのか。

その理由は英語による教養教育にある。同大の外国人教員比率は83.9%で日本一。2年次後半には、4カ月の留学が義務付けられている。

海外研修も全員必修。

「一部の科目では習熟度別クラスを実施していますが、英語ができない学生でも最初から英語による講義を受けることになります」

と隈元正行学長。英語だけか、と思いきや、そうではないとも強調する。

「英語だけなら、専門学校でもいいでしょう。しかし、広い視野を持つには大学での教養教育が必要です。国際化に対応できる人材を輩出していきたい」

半数以上が宮崎県内出身のため、就職先は宮崎銀行、宮崎日日新聞など県内企業が多いが、全日本空輸や積水ハウスなど県外企業にも就職者を出している。

「今後は卒業時でのTOEIC平均700点が目標です」(隈元学長)

(大学ジャーナリスト 石渡 嶺司)

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