特集2017年2月15日更新

「JASRACが音楽教室からも徴収」の問題点とは?

音楽の著作権などを管理している団体「日本音楽著作権協会(JASRAC)」が、音楽教室での演奏についても著作権料を徴収する方針を固めたということが2月2日に報道されました。この方針に対して、教室側のみならず音楽関係者やネットからも反発の声が多くあがっています。いったい何が問題なのでしょうか?

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JASRACの徴収方針に業界などから反発の声

2月2日、JASRACの新たな徴収方針が明らかに

 日本音楽著作権協会(JASRAC)は2月2日、「ヤマハ音楽教室」など楽器の演奏を教える教室から著作権料を徴収する方向で検討していると明らかにした。早ければ来年1月から徴収する考えだ。

ヤマハ、河合などの企業・団体が「音楽教育を守る会」を結成

ヤマハ音楽教室を運営するヤマハ音楽振興会や、河合楽器製作所など7企業・団体は2月3日、「音楽教育を守る会」を結成したと発表した。JASRACの方針に反対し、対応を協議していく。

音楽関係者からも疑問の声があがる

宇多田ヒカル「学校の授業では私の曲を無料で使って」

4日、今回のニュースに歌手の宇多田ヒカルさんも反応。すさまじい勢いでリツイートされました。

「残酷な天使のテーゼ」作詞者の及川眠子さん

JASRAC正会員で、「残酷な天使のテーゼ」「淋しい熱帯魚」などの作詞を手掛けた及川眠子さんも3日にJASRACに対する疑問の声をあげて話題となりました。

 JASRACの方針を及川さんも疑問視。「音楽はタダではない」「違法ダウンロードなどの著作権侵害は厳しく取り締まってほしい」とする一方、「音楽を学びたい、いつか音楽の世界で花を咲かせたいと願う子どもたちには、自由に楽曲を使わせてあげてほしい。それが未来の音楽への恩返しだ」と訴えている。

二人のほかにもミュージシャンや音楽評論家などの方たちがTwitterで発言されています。

ロックバンド「くるり」の岸田繁さん

ベーシストの伊藤健太さん

音楽評論家・音楽プロデューサーの高橋健太郎さん

音楽評論家の萩原健太さん

ネットでも怒りの声が殺到

ネット上では「感情論抜きで言えば法にのっとってやっているだけ」と理解を示すコメントが寄せられた一方、「音楽教育分野に著作権は関わるべきではない」「楽曲を拡散する機会をつぶすような行為」「音楽文化を育てる気はないの?」など反発する声が多く挙がっています。
ツイッターには、
「JASRACのやってることって誰のためなんだろか」
「音楽業界の裾野を広げるようなとこからも徴収していくと、結局業界自体の縮小に繋がるのではないかな。著作者の方の利益に繋がるとは思えないけどなぁ」
「音楽に触れる機会を減らして、JASRACは自分の首を絞めている」
と、怒りの声が殺到。さながら“炎上”のような状況となっている。

そもそも「JASRAC」とは何をする団体?

著作権料の徴収を著作者に代わって行う「著作権管理事業者」のひとつ

著作権者から著作権を預かって、煩雑な著作権料の徴収を著作者(作曲家や作詞家など)に代わって行う「著作権管理事業者」のひとつです。JASRACは国内外の350万曲の著作権を管理していてシェアが90%を超え、実質的な「独占状態」と言われています。

JASRACは、膨大な数の管理楽曲をデータベース化し、演奏、放送、録音、ネット配信などさまざまな形で利用される音楽について、利用者の方が簡単な手続きと適正な料金で著作権の手続きができる窓口となっています。そして、お支払いいただいた使用料は、作詞者・作曲者・音楽出版者など権利を委託された方に定期的に分配しています。
「著作権管理事業者」は作詞家・作曲家や音楽出版社等の「著作権者」から「著作権」を預かり、レコード会社、テレビ局やカラオケ店等から「著作権使用料」を徴収。徴収した「著作権使用料」から「管理手数料」を差し引いた残りを「著作権者」に分配しています。

日本の著作権管理団体は長らくJASRACだけだった

 日本国内で著作権管理を行うことのできる法人が長らくJASRACしかなかったのは、国が音楽分野における著作権仲介業務をJASRAC以外に許可しなかったからであるが、01年に参入規制を緩和した著作権等管理事業法が成立したことで、他の民間の会社も著作権管理事業に参加することができるようになった。

2015年度の年間徴収額は1117億円

JASRACの公開資料によると、2015年度の年間徴収額は約1117億円となっています。

ネットで敵視されがちなJASRAC

強い反発を受けているJASRAC。今回の件に乗じて過去の著作権料支払い要求事例が蒸し返されるという事態も起きています。

「4分33秒黙ってたら著作権料発生!?」というネタも話題に

今回の騒動で、ネット上では「4分33秒黙るとJASRACが来るんじゃないか!?」といった心配の声(?)も話題となりました。

 このウワサは、ジョン・ケージという前衛音楽家が作曲した「4分33秒」という楽曲に由来するもの。「4分33秒」は“演奏者が一切演奏せず4分33秒を無音のまま終わらせる”というあまりにも前衛的な楽曲で、これまでにもこの楽曲を演奏するアプリが登場したり、なぜかデスメタルカバーされたりと、ネット上でも度々ネタにされている楽曲です。もちろんJASRACのデータベース「J-WID」にも掲載中。

「暴言」を繰り返すJASRACの偽Twitterも登場

5日にはJASRACになりすましたTwitterアカウントが登場して話題に。現在は閉鎖されているこのアカウントについて、JASRACは「一切関与していない」としています。

アカウントは2月5日夜、「この垢(編集部注:アカウント)が偽物だとよくわかりまちたね」「JASRACに歯向かうんじゃねーよ。著作権泥棒野郎がよー」「とにかくJASRAC批判すんのやめろ!著作権違反するやつが悪い」などと投稿。偽アカウントであることを認めながらも「暴言」を繰り返した。

「JASRAC」を検索すると「ヤクザ」が検索候補上位に

ネットでJASRACがどのように思われているかを端的に表す現象ですね…

JASRACのことをもっと知りたいと思いGoogle検索してみると、不思議な現象が起きたんだ。「JASRAC」と打ち込むと「ヤクザ」が検索候補に上がってくるじゃないか……。これは一体どういうこと?

なぜJASRACは音楽教室からも徴収する判断に至ったのか?

根拠は「演奏権」

著作権法第22条では、著作物を公衆に聞かせるために演奏する権利「演奏権」を著作者が専有すると定めています。

第二十二条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

「専有」ということで他人は演奏権を行使することができませんので、演奏を行う場合は著作権者の許諾が必要となります。その許諾の対価が著作権料(著作権使用料)ということになります。

「演奏権」は身近なカラオケでも発生している

演奏権でいう「演奏」には歌唱も含まれるため、すでにカラオケでは演奏権にもとづいた著作権料の徴収が行われています。2015年度の年間徴収額は約128億円で、演奏権関連の全体徴収額が約212億円ですから主要な徴収源となっています。

カラオケが、テープからレーザーディスク、通信式へと技術が進歩し、国民的な娯楽へと定着する過程で、JASRACは1987年4月からカラオケ伴奏による「演奏権」管理をはじめた。業界団体の協力をえながら、徴収率は90%となっている。

音楽教室の先生や生徒による演奏も「公衆の前での演奏」と判断

この権利についてJASRACは、音楽教室での指導者や生徒による演奏を「公衆の前での演奏」と解釈し、徴収を始める方針だという。

演奏権が関係してくるのは「公衆の前での演奏」です。「公衆」についての論点は後述しますが、著作権法での「公衆」とは簡単に言うと「不特定または多数」のことです。
一人で鼻歌を歌ったり、それを家族に聞かせたり、自宅などで演奏の練習をしていても演奏権の問題が発生しないのは、「公衆」に向けた演奏ではないからです。

新たな判断により徴収対象を広げるケースは過去にもあった

JASRACこれまで、コンサートやカラオケ店での演奏のほか、ダンス教室やフィットネスクラブ、カルチャーセンター、歌謡教室などでの演奏から使用料を徴収してきた。

JASRAC理事長「商売で音楽を使うなら権利者への対価が必要」

日本音楽著作権協会(JASRAC)の浅石道夫理事長は2月9日、東京都内で開いたシンポジウムで、音楽教室から使用料を徴収する方針に触れ、「ご商売で音楽を使う場合、権利者に対する対価還元が必要ではないか。どんな世界でも一緒だと思っている」と述べた。

日本経済新聞のインタビューでは、浅石理事長は「すでに楽器を教える場合もあるカルチャーセンターからも使用料を徴収している。公平性の観点からすれば、徴収しないほうがおかしい」と述べています。JASRAC広報部も「公平さの観点」に言及していますので、これが今回、JASRACが音楽教室からも著作権料を徴収するという判断に至った最大の理由と思われます。

また、法学者でJASRAC外部理事も務めている玉井克哉さんは個人的見解としながら今回の件に関するネットユーザーの疑問や反発に返信するなど、多くのツイートをしています。この膨大なツイートの中にもJASRACが今回の判断に至った理由を探るヒントがありそうです。

JASRACに対する反発の原因を探る

JASRACという組織についてや新たな方針に至った理由などに触れたところで、改めて今回の問題に対するネットを中心とした反発の原因を考察してみます。

JASRACの動きは音楽文化の発展を阻害する?

音楽ジャーナリスト・宇野維正さんのツイートに代表されるように、音楽関係者の皆さんからの発言もネットの声も、多くが「日本の音楽文化の発展」を危惧する声です。そもそも著作権法の目的は「文化の発展に寄与すること」であるため、このような反発の声があがるのもうなずけます。
ただし、「著作者の権利の保護」も著作権法の目的であり、そのバランスが今回のような問題の難しいところです。

第一条  この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

ちなみに、JASRACの「事業の目的」も同じです。

事業の目的

音楽の著作物の著作権を保護し、あわせて音楽の著作物の利用の円滑を図り、もって音楽文化の普及発展に寄与すること

このような「事業の目的」を持っているにもかかわらず、JASRACには「他人の権利で人からお金をむしり取る」イメージや「管理を委託している本来の権利者の意向とズレてない?」と思わせる点があり、このようなイメージが反発を呼ぶ原因かも知れませんね。

 Twitterユーザーからの「JASRACは著作者の権利を守るというよりは、営利目的で使用料を徴収しているイメージがある」といった声に対し、「音楽著作権協会をこういうイメージで見てる人は多い。そして多くの作家やアーティストが『JASRAC嫌い』に陥る」と及川さん。

「頭が高すぎる集金人」

ブロガーで個人投資家のやまもといちろうさんは「JASRACの嫌われっぷりも大問題」として、次のように述べています。

 やはりこの辺は、冒頭でも述べた通り、お金を集めるJASRACが嫌われ過ぎていてどうしようもないってことなんじゃないかと感じます。人からお金を出してもらうにあたって、本音や権利関係はともかく頭を下げたり、恐縮です的スタイルがきちんと見られなければそりゃ反発買うよなあと。

反発に対する疑問の声も

ツイッター上には
「JASRAC が音楽教室からお金取るのそんなに悪いことだろうか? 誰かの作った音楽を利用させてもらって自分もビジネスやってお金稼いでいるのならその分を元の著作者に還元することは至って真っ当なことのように思える。」
「生徒が一般聴衆ってのはだいぶおかしい発想だと思いますが、、まぁそれ置いといてそれが学校とかじゃなく営利目的なら当然徴収するべきだと思います。むしろ今までとってなかったんだなぁ...」
「言われてみれば、確かに不特定多数の公衆に演奏させてるから適用されるのか。難しいな著作権って。もっと自由に音楽が楽しめればいいのにな~」
などという意見もあり、一筋縄ではいかない問題であることを象徴している。

「音楽文化の発展を阻害している」と反発されるJASRACですが、音楽文化を育てることに貢献している側面を指摘する声もあります。
そういった声を要約すると、「音楽を使おう」と思った時に「著作権者か著作権管理者を探す→連絡先も探して連絡する→許諾や金銭の交渉をする」という面倒な作業をJASRACに対する手続きだけで済ませることができるのは、気軽に音楽を利用できることにつながり、これが音楽文化の発展に寄与している、ということです。
確かに著作権者が違う曲が10曲あったら、10回同じことを繰り返す必要があるわけで、面倒なことになりそうですね。

結局、何が問題なのか…論点まとめ

最後に今回の話題について法的な根拠や解釈にもとづく論点、問題点をまとめてみました。

音楽教室での演奏は「公衆に聞かせるための演奏」なのか

 少数ずつの生徒への教室使用が「公衆に聞かせるための演奏」(著作権法22条)かが論点だ。従来、裁判所は生徒も不特定者であるなどの理由で「公衆」と理解してきたがそれで良いのか。それ以前に、そもそも「聞かせるための演奏」なのか。

「公衆」に対する解釈

『公衆』の解釈をめぐっては、過去にさまざまな裁判がありました。たとえば、カラオケ店でのカラオケ曲の再生や、社交ダンス教室でのダンス曲の演奏が、『公衆』にあたるのかどうかが争われて、どちらも『公衆』にあたると判断されました。
特に、社交ダンス教室の事件では、受講生のみに対するダンス曲の演奏(実際にはダンス曲が収録されたCDの再生)も『公衆』への演奏にあたると判断されています。

音楽教室での演奏が「公衆」にあたるのか?

「音楽教室での演奏が『公衆』にあたるかどうかは、議論がありそうです。
社交ダンス教室の事件で、裁判所は、受講生は(1)ダンス教室の営業中いつでもレッスンを受けることができることや、(2)マンツーマンかグループレッスンかの選択ができることなども考慮に入れて、受講生に向けての演奏も『公衆』にあたると判断しました。
一方で、音楽教室は、形態がさまざまです。生徒が決まった時間にレッスンを受けなければならない教室もありますし、完全にマンツーマンのみの教室もあります。このような場合にも『公衆』にあたるのかどうかは、裁判例からは明らかにされていません」

仮に「公衆に聞かせるための演奏」であった場合でも例外がある

著作権法には、著作権に関する制限も定められています。この場合の「制限」とは「特定の要件が満たされていれば『著作権侵害だ!』と言えませんよ」という、著作権者に対する制限なので、利用する側は自由に利用できるということです。
演奏権に関しては「営利目的での演奏ではないこと」「観衆から料金を取らないこと」「演奏者に報酬が支払われないこと」の3つを満たせば著作権料が発生しません。

 教室使用が「公衆に聞かせるための演奏」と認められた場合も、「非営利の演奏」と認められれば例外として著作権料を支払う必要がない(同38条)。その条件は、(1)非営利、(2)著作物提供の対価を徴収しない、(3)実演家等が無報酬――だ。

 (1)については、ヤマハ音楽振興会は財団なので非営利法人だが、ヤマハ音楽教室の各教室はどうか。(2)は、指導の対価であって音楽提供の対価ではないのでは、との疑問もありそうだ。

なお、学校の授業で先生がお手本を演奏しても著作権料が発生しないのは、上述した著作権の制限規定があるためです。学校には授業料や給料などがありますが、生徒側は「先生の演奏を聞くため」に授業料を支払うわけではなく、先生側は「生徒に演奏を聞かせるため」つまり「音楽の演奏への対価」として給料をもらっているわけではないからです。
このため、「音楽教室は音楽大学や専門学校とどう違うの?」「その線引きはどうするの?」も今回、議論の対象となっています。この件についてJASRACの浅石理事長は、「音楽教室は学校ではない。『学校法人』になれば徴収しない」としています。

閑話休題…宇多田さんのツイートをめぐるアレコレ

「学校」の話を出したので、ここで一旦論点まとめから離れて、宇多田ヒカルさんの「無料で使ってほしい」ツイートについて検証してみます。

宇多田ヒカルさんは4日「もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな」と投稿した。
 今回、JASRACが徴収対象として検討しているのは、営利で運営されている音楽教室での楽曲演奏だ。学校の授業での演奏については、もともと著作権料は発生せず、宇多田さんは勘違いしている可能性がある。

このように「勘違い」を指摘する意見がある一方で…

ニュースのコメント欄などでは、宇多田ヒカルさんの言う「学校の授業」をヤマハなどの音楽教室を含むと捉えた向きが多い。「音楽文化を潰す気か」とJASRACへの反発が強まっており、宇多田さんのツイートには、「すばらしい考えですね」「宇多田が代弁してくれた」などと賛同の声が書き込まれている。

なお、宇多田さんのように「いらない」と宣言しても著作権料は徴収されるようです。

 今回の宇多田のツイートに関し、著作権に詳しい福井健策弁護士は「楽曲の著作権は、管理団体に信託譲渡した時点で、作者も自由にできない」と話した。「“著作権料はいらない”と宣言しても徴収される」という。

また、前出の玉井さんは「宇多田さんのような考えは少数」と述べていますが…

こういった声は無駄ではなさそうです。

ただ、「著作者サイドからそうした声が大きくなればJASRACの方針にも影響大だろう」とも。JASRACが権利者に代わって著作権使用料を徴収している以上、運用には権利者の意見が反映されることになる。

一律の使用料を徴収することは妥当か?

JASRACが著作権料を徴収できるのは当然JASRACが管理する曲のみで、著作権が切れたクラシック曲などは本来対象外です。しかし今回、「受講料収入の2.5%」という一律の使用料を徴収する点も議論のポイントとなっています。

JASRACは、ヤマハや河合楽器製作所などの音楽教室に対し、18年1月から受講料収入の2.5%程度を徴収する方針を固めた。
「JASRACが音楽教室から一律の使用料を徴収することが妥当かどうかも、議論がありそうです。
音楽教室によっては、クラッシック音楽やハノン(教則本)など、すでに著作権が切れている楽曲や、その教室のオリジナルの楽曲を利用することも多く、これらの楽曲の使用については、JASRACが著作権使用料を徴収する権限はありません。
したがって、JASRACが音楽教室から著作権使用料を徴収するには、いくつかの問題点をクリアする必要があるといえそうです」

「使用料規定には相当な配慮が必要」

これまで紹介してきた複数の記事で「著作権に詳しい弁護士」として意見を求められている福井健策弁護士のブログやツイートにも注目です。

双方の言い分は?

音楽教室側「文化の発展に寄与するという著作権法の目的に合致しない」

ヤマハなどの音楽教育事業7団体は、2月2日に「音楽教育を守る会」を設立して、JASRACの徴収方針に反対している。
そこでは、「演奏権が及ぶのは公衆に聞かせるための演奏であり、音楽教室での練習や指導のための演奏は該当しない。文化の発展に寄与するという著作権法の目的にも合致しない」と主張している。

JASRAC側「権利者にお金が回ることが新しい作品を生む」

JASRACの浅石理事長は、「演奏権は音楽教室での練習や指導のための演奏には及ばない」という教室側の主張に対して、「公衆」に関しては社交ダンス教室からの徴収をめぐる判例を挙げ「争うことは何もない」とし、「著作権法の目的に合致しない」という主張に対しては、「権利者にお金が回ることが新しい作品を生む」「『受講料は取る、でも外にお金を一切出さない』では創作者にお金が回らない」として、JASRACと音楽教室のどちらが文化発展に寄与しているのか「一目瞭然」と述べています。

決着方法は?

 教室側の反発が報じられていることについては「話し合いなど、利用者側と協議する必要があると思っています。権利があるからといって、強制的な徴収はできません。徴収を見送るということはないが、何らかの形でお互い納得する形にしたい」と語っていました。

JASRACは話し合いをする意思があるようで、また教室側も「音楽教育を守る会」を結成したことから、いずれJASRACと教室側で協議が行われると思われます。
現時点ではJASRACと音楽教室側の主張が真っ向から対立していて、この先も方針に変化がなく協議などで合意できなければ、裁判で争う可能性が高そうです。


今回の件に限らず、JASRACの方針や著作権をめぐる論争の多くは、著作権法が目的とする「著作者の権利の保護」と「文化の発展」のバランスをどう取るかが最大のポイントとなります。協議でどう決着するのか、もし裁判までもつれた場合、司法はどういった判断を下すことになるのか、今後の動きも注目の案件だと言えます。

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