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金山全体の歴史説明=韓国反発で、追加的勧告も―世界遺産

時事通信 2024年7月27日 15時23分

 「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録を巡り、韓国は「朝鮮半島出身者の強制労働の現場だった」と主張してきた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関からも追加的勧告を受けた政府は、水面下で韓国との対話を重ね、金山全体の歴史を説明する施設の整備などに応じた。この結果、世界遺産委員会の審議では、韓国を含む全会一致で登録が決まった。

 16世紀半ばに本格的に開発された佐渡島の金山は、資源が枯渇する1989年まで操業が続いた。政府は2022年、「江戸時代に伝統的手工業を活用し、大規模かつ長期にわたって継続した希少な産業遺産だ」として、手工業で金が生産された16世紀末~19世紀半ばに絞って推薦を決めた。

 これに対し韓国では、「太平洋戦争中に強制労働の現場となった」として官民合同のタスクフォース開催や、国会での決議採択など、推薦撤回を要求する動きがあった。

 ユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)は今年6月、金山に対し「情報照会」を勧告。この際、「鉱業採掘が行われたすべての時期を通じた、歴史を包括的に扱う説明・展示戦略の策定と施設の整備」を追加的に要請した。

 世界遺産委も登録に当たって同様の内容を勧告。日本政府代表は「韓国と緊密に協議し、全体の歴史を扱う説明・展示戦略を強化すべく努力する」との声明を読み上げた。

 戦時中の「強制労働」を理由にした韓国側の反発は、15年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」でもあった。この時も、軍艦島(長崎市)での採炭の歴史などを展示する「産業遺産情報センター」(東京都)を設置することで登録を了承した経緯があった。

 元イコモス副会長の西村幸夫・国学院大観光まちづくり学部長は「世界遺産の趣旨は、違う文化を理解して認め合うことにある。登録を巡って国同士が対立するのはおかしい」と話す。

 「遺産としての価値と、政治問題は切り離して考えるべきだ」とした上で、「金山の操業は江戸時代で終わらず近代まで続いた。データを基に淡々と全体像を示す必要がある」と話した。 

[時事通信社]

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