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「弟分」と挑んだ五輪=東京の覇者、メダル届かず―柔道・ウルフ選手〔五輪〕

時事通信 2024年8月1日 23時47分

 柔道男子100キロ級、ウルフ・アロン選手(28)=パーク24=は栄冠に輝いた東京五輪以降不振が続いた。「弟分」に支えられ、土壇場で復活を遂げてパリへの切符を手にしたが、敗者復活戦で敗れメダルに届かなかった。

 宇田川力輝さん(26)は二つ後輩。小学4年の時、柔道の総本山・講道館(東京)の春日柔道クラブでウルフ選手と出会い、同じ中学、高校に進学した。後を追うように入部した東海大柔道部では、打ち込みの練習相手として共に汗を流した。

 2人は実業団入り後も東海大を練習拠点とし、宇田川さんはウルフ選手の遠征にも帯同するように。「柔道の技術も尊敬できるし、とにかく面倒見が良い。この人のためならなんでもしようと思った」。いつしかウルフ選手中心の生活に変わった。

 東京五輪後、ウルフ選手は1年ほど柔道を休養し、テレビ出演やSNS、動画配信に力を入れた。撮影、編集は宇田川さんの役割で、私生活や練習の様子を面白おかしく配信。ウルフ選手は柔道人口の減少を憂いていたといい、宇田川さんは「本人には興味を持つ人が増えてほしいという考えがあった」と明かす。

 ウルフ選手は全日本選手権、世界選手権、五輪を制した8人しかいない「3冠」の一人だ。だが、本格的に復帰した2022年秋以降の戦績は低迷。無尽蔵のスタミナを誇ったかつての姿は鳴りを潜めた。「ここまでやったし、もう引退していいよね」。明るく振る舞う陰で、そう漏らすことも少なくなかった。

 「一緒に頑張りましょう」。背中を押し続けた宇田川さんはこの間、ウルフ選手の専属の付き人となり、練習相手や送迎、スケジュール調整などに当たった。「自分は弟分、毎日が光栄」と全てをささげた。

 崖っぷちで挑んだ今年2月の国際大会で、ウルフ選手は体力任せの戦術から速攻の柔道に変えて優勝。2度目の五輪出場を決め、「兄貴」の意地を見せた。 

[時事通信社]

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