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原点は相撲、鍛えた足腰=「努力の天才」、つかんだ金―レスリング・日下選手〔五輪〕

時事通信 2024年8月8日 4時4分

 五輪初出場で金メダルに輝いたレスリング男子グレコローマン77キロ級、日下尚選手(23)=三恵海運=の強さの原点は相撲だった。気弱で優しい少年は、土俵で培った粘り強い足腰とひたむきさで飛躍し、頂点に上り詰めた。

 優勝が決まると、マットに両膝をつき、大きな雄たけびを上げた。応援団が座る観客席に向かって日の丸を掲げ、満面の笑みを浮かべた。

 地元の高松クラブ(高松市)で競技を始めたのは3歳の時。母親のそばを離れたがらない「泣き虫」で、小6まで指導した山下和代さん(57)は「いつも眉がハの字になっていた」と笑う。試合中でも相手を気遣う優しさがたたり、結果が出ない日々が続いたが、小6で取った全国大会での銅メダルが競技を続ける原動力になった。

 柔軟性と強靱(きょうじん)な足腰は、中学に入る前、マットの上で生かそうと始めた相撲で培った。進学先の高松北中のレスリング部監督だった竹下敬さん(57)は、その長所を伸ばすべく、「レスリング3割、相撲7割」の指導を心掛けた。試合結果より、相撲の動作を生かした「前に出るレスリング」にこだわったという。

 ストイックさも長所に挙げられる。高2春のジュニアオリンピックで優勝した日下選手は、秋の国体でまさかの1回戦負けを喫すると、自ら丸坊主に。翌日からスクワットを日課にして足腰をさらに強化し、高3で全国優勝を重ねた。

 高校時代も指導した竹下さんは「普通の子は妥協して諦めることも、彼は諦めない。努力できる天才だ」と評する。

 日下選手は今も、「調子が悪い」と感じた時は原点を思い出し、四股を踏んで頭をリセットさせるという。ハの字の眉の面影はもうない。 

[時事通信社]

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