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タンク解体、着手にめど=海水トリチウムは基準値未満―トラブルも・処理水放出1年

時事通信 2024年8月24日 14時22分

 東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出では、これまでの1年間で計8回、約6万トンが海に流された。国や東電が周辺海域で行っている調査では、処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度は基準値を大幅に下回っており、国際原子力機関(IAEA)は7月、国際的な安全基準に合致しているとする報告書を公表した。

 東電は早ければ来年から、空になった処理水用タンクの解体に着手し、原発事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)の本格的取り出しなどに向けた敷地として活用する方針だ。

 今年度4回目の放出が始まった8月上旬、処理水放出設備が報道陣に公開された。海洋放出の操作などを行う集中監視室では、職員が24時間体制で複数のモニターに表示されたタンクの水位などを確認していた。

 放出はほぼ計画通りに進んでいるが、今年3月には最大震度5弱の地震で一時中断したほか、翌4月には敷地内の掘削作業で誤って地中の電源ケーブルを損傷させ、放出設備などへの電力供給が停止するトラブルが発生。放出以外でも、今月22日から予定していたデブリの試験的採取で装置の取り付けミスが判明して中止になった。東電担当者は「これまでうまくいったから次もうまくいくだろうという油断が生じないよう、引き続き緊張感を持っていきたい」と話す。

 放出では毎回、約7800トンの処理水を大量の水で薄め、トリチウムやその他の放射性物質の濃度が基準未満であると確認した上で海に流す。ただ、デブリの冷却などで汚染水は日々発生するため、放出分がそのまま減少するわけではない。

 昨年度は4回で約3万1200トンを放出する一方、1日約80トンの汚染水が発生。実際の減少量は約1万9000トンだった。大雨が降らなかったため、当初の想定よりも多く減ったといい、この1年で貯蔵量はタンク総容量の98%から95%になった。

 東電は約1000基ある処理水タンクのうち、空になった12基から解体を進め、1~3号機内にある推計880トンに上るデブリの分析や取り出し、保管などに向けた施設を整備するとしている。

 原発周辺海域では放出開始前の2022年からトリチウム濃度を調査し、ウェブサイト上で公開している。これまでの最高値は5月に検出された1リットル当たり29ベクレルで、政府方針に沿って東電が定めた基準値(同1500ベクレル)を大幅に下回っている。環境省や福島県なども海水や魚類、海藻の検査を続けているが、放出を止めるような高い値は出ていない。

 一方、放出開始後に福島県内などの漁業関係者が福島地裁に差し止め訴訟を起こしたが、国と東電はいずれも争う姿勢を示し、係争が続いている。 

[時事通信社]

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