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保守層にらみ改憲アピール=自民総裁選へ各候補

時事通信 2024年9月2日 21時8分

 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)では憲法改正を巡る各候補者の主張にも注目が集まっている。早期改憲論が党内に強いことを意識し、前向きな姿勢をアピールする発言も既に上がりつつある。ただ、世論の機運が熟しているとは言えず、拙速な議論はかえって他党や一般有権者との距離を広げる可能性がある。

 「新総裁にも引き継ぐ申し送りをし、さらなる議論につなげていく」。2日、自民党の憲法改正実現本部に出席した岸田文雄首相(党総裁)はこう述べ、「ポスト岸田」に早期の国会発議に努めるよう求める考えを示した。同本部は、現行の憲法9条の条文を維持した上で「自衛隊の保持」を新たに明記することなどを盛り込んだ論点整理を了承した。

 最も早く立候補を表明した小林鷹之前経済安全保障担当相(49)は8月の出馬記者会見で「(改憲は)もはや先送りできない課題だ」と強調。今月2日には青森市内で記者団に、「自衛隊の明記と緊急事態条項の創設は優先順位を高くし、発議に向けて各党と交渉を進めていく」と述べた。

 改憲論者で知られる石破茂元幹事長(67)は戦力不保持を定めた9条2項の削除を主張してきた。ただ、2日の実現本部後、記者団から2項削除を引き続き主張するか問われ、「今回決まった以上、議論を振り出しからしてもしょうがない」と態度を軟化。一方で持論の「安全保障基本法」について「きちんとつくることを軸に据えていきたい」と指摘した。

 ここにきて改憲への傾斜を強めているのは小泉進次郎元環境相(43)だ。2日、東京都内で記者団に対し、改憲について「自民党立党からの国民との約束。しっかり守ることが重要だ」と訴え、「国民投票を一日も早く実施したい。自衛官が憲法に位置付けられる環境をつくる」と意気込みを語った。

 実現本部の事務総長を務める加藤勝信元官房長官(68)は2日、記者団に「(論点整理を基に)国会提出、国民投票という道筋を進めていきたい」と述べた。

 河野太郎デジタル相(61)は出馬会見で改憲への対応を問われ、「なるべく早く発議へ持っていきたい」と説明した。「岩盤保守層」に支持基盤を置く高市早苗経済安保担当相(63)は改憲に前向きな発言を続ける。

 もっとも、各候補とも派閥裏金事件の真相究明などへの対応が問われる中、改憲を巡って積極的に発信する背景には、「批判の矛先をそらす狙いもあるのでは」(政府関係者)との指摘も出ている。立憲民主党は自民が主導する形の改憲に距離を置く。公明党関係者は「総裁選で保守層を固めたいのだろう。静観する」と冷ややかに語った。 

[時事通信社]

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