原始的な藻類から葉緑体を取り出し、医薬品の生産に使われる動物培養細胞に特殊な方法で移植したところ、光合成の初期反応である電子の発生を少なくとも2日間検出したと、東京大や理化学研究所などの研究チームが30日発表した。光合成による酸素の発生はまだ確認できていないが、持続的に発生する動物細胞を実現させ、再生医療研究などに応用することを目指している。
再生医療分野では、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を実験容器内で培養し、ミニサイズの肝臓や腎臓などを作って病気のメカニズム解明や新薬候補物質のテストに使う研究が活発化している。将来は患者への移植も期待されるが、ミニ臓器の内部に酸素を供給できないため、大きくできない。光合成機能を付与し、光の照射で酸素を供給できれば、解決策になる可能性がある。
葉緑体は大昔には独立した細菌だったが、植物に取り込まれて細胞小器官に変わった際、単独で光合成を行うのに必要な遺伝子群を失った。このため、通常の植物の葉緑体を動物細胞に注入しても光合成は起きず、異物としてすぐ分解される。
そこで東大の松永幸大教授らは原始的な藻類「シゾン」から葉緑体を取り出し、医薬品生産用のハムスター卵巣培養(CHO)細胞に細胞膜の一部から取り込ませる方法を開発した。
その結果、光の照射により水を分解し、電子が発生。この反応は葉緑体が分解されるまで2~4日間検出された。松永教授は「酸素も発生しているとみられる。今後確認するとともに、葉緑体が分解されにくくしたい」と話している。
論文は日本学士院発行の国際科学誌に掲載される。
[時事通信社]