【パリ時事】欧州で台頭著しい極右・右派ポピュリスト政党が、米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利したことに沸いている。「反移民」などの主張で共通点を見いだし、党勢拡大の追い風になると期待。「愛国者の時代が来た」「欧州も続け」と気勢を上げるが、一部には「米国第一主義」を警戒する慎重派もいる。
「トランプのためにレッドカーペットを敷かねばならない」。英右派政党リフォームUKのファラージ党首は、新聞への寄稿で大統領選の結果を歓迎した。英与党・労働党は民主党のハリス氏陣営を支援し、しこりを残した。ファラージ氏はトランプ氏と親交があり、米英間の溝を埋めるためなら「喜んで手助けする」と影響力を誇示する。
大統領選の翌日に連立政権が崩壊したドイツでは、極右「ドイツのための選択肢(AfD)」が活気づく。「米国民はドイツ同様、終わりのない戦争や不法移民にうんざりしている」と米欧の類似点を強調。2025年3月の実施が想定される総選挙では、最近の地方選で波に乗るAfDがどこまで議席を伸ばすかが焦点の一つに浮上している。
イタリアは極右中心の連立政権を率いるメローニ首相がトランプ氏と電話会談し、「2国間関係の強化」で一致した。ファシスト党の流れをくむ「イタリアの同胞」党首のメローニ氏は、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援などで各国と足並みをそろえ、国際的な信頼を得た。だが、政権には親ロシア派もいる。支援に消極的なトランプ氏になびけば、欧州の結束は大きく揺らぐ。
一方、今年6~7月のフランス総選挙で躍進した極右・国民連合(RN)は、関税引き上げなどを唱えるトランプ氏への警戒を強めている。バルデラ党首は、世界の大国が「欧州に経済戦争を仕掛けている」と非難し、「自分たちの運命は自分たちで決める」と強調した。
極右票だけでは政権奪取が難しいRNは、主義・主張を穏健化させて支持を拡大しようと躍起だ。世論調査でトランプ氏が仏有権者に不人気なことも、距離を置く理由とみられる。
[時事通信社]