【ニューヨーク時事】米大統領選で勝利したトランプ前大統領は、気候変動問題に向き合わず、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から再離脱する構えだ。11日に国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)がアゼルバイジャンで開幕するが、国際協調の先行きには暗雲が漂う。
トランプ氏は選挙期間中、温暖化に関し「今後400年で海面は8分の1インチ(約3ミリ)上昇する」と誤った数値を主張。「オーシャンフロントの物件が増える」とうそぶいた。トランプ氏が南部フロリダ州に構える邸宅近辺の海面は、温暖化対策が強化されなければ2100年までに現状から76センチ上昇すると予測されている。
気候変動問題を軽視するトランプ前政権下で、世界第2位の温室効果ガス排出国にもかかわらず、米国はパリ協定を離脱。今回も離脱すれば、世界の温暖化対策に打撃となる。地球科学に詳しい英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)のマーク・マスリン教授は「超大国が抜けると、他国にも脱炭素化の遅れを許すことになる」と指摘する。
国際的な合意形成も難しくなるとみられる。COP29では、発展途上国の気候変動対策を後押しするための新たな資金支援目標で合意できるかどうかが焦点。米国不在により、日本を含む他の先進国に資金拠出圧力が強まる可能性がある。
[時事通信社]