【リマ時事】中国の習近平国家主席は13日、南米歴訪に出発した。ペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議とブラジルでの20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席。トランプ次期米政権の発足で米中対立が激しさを増す事態に備え、新興・途上国の取り込みを図る。
「習主席はAPECでアジア太平洋の協力に向けた提案を行う。G20への出席は、多国間主義への確固たる支持を示すものだ」。中国外務省の毛寧副報道局長は8日の定例会見でこう述べ、両会議の意義を強調した。ただ、習氏は国境問題で対立するインドが議長国を務めた昨年のG20は欠席している。
習氏の念頭にあるのは、返り咲きを決めたトランプ次期大統領の動向だ。トランプ氏は中国に対する関税の大幅引き上げや最恵国待遇撤回を主張しており、年明け以降、米中貿易戦争の再燃は必至だ。
南米で習氏は退任を控えたバイデン米大統領と「最後の首脳会談」を行い、衝突回避に向けた対話の重要性を再確認する見通し。ただ、ここでの合意事項が次期政権の対中政策に影響を与える可能性は低く、北京の識者は「残り2カ月間の安定」を保証するだけの意味しかないと指摘する。
今回の外遊で習氏が米国よりも重視するのは、中南米をはじめとした新興国との関係強化だ。ペルーでは習氏訪問に合わせ、中国企業が建設を手掛けた巨大港、チャンカイ港が開港する。習政権の巨大経済圏構想「一帯一路」の南米における目玉事業。「米国の裏庭」とも呼ばれる地域での中国の存在感を印象付けるとともに、米中通商摩擦の激化を見越し、南米市場とのパイプを強固にする狙いがある。
習氏はブラジルではルラ大統領と会談する。中国とブラジルは、ロシアが侵攻を続けるウクライナ問題の「仲介役」に名乗りを上げて連携を強めており、新興国グループ「BRICS」などの枠組みを通じた一層の協力強化を確認するとみられる。
[時事通信社]