衆院の過半数を占める政党がない「宙づり議会(ハングパーラメント)」は、これまでの政策決定のプロセスを大きく変えそうだ。自民、公明両党による予算案や法案の「事前審査」に代わり、野党との協議が大きな影響力を持つのは必至。形骸化が指摘され続けてきた国会論戦の活性化につながる可能性もある。
「これまでと比べて大幅に変わる。各党の主張が法案や予算案の修正という形に収斂(しゅうれん)していく」。立憲民主党の重徳和彦政調会長は14日の記者会見で、国会運営の主導権確保に意欲を示した。
事前審査は、政府が国会に提出予定の予算案や法案について、与党が政務調査会の下に置かれた各部会などであらかじめ議論し、意見を反映させる仕組み。了承された場合、与党は党議拘束を掛け、修正を求めず賛成してきた。
ただ、与党が衆院の過半数を失ったことで、予算案や法案の成立には、野党の協力が欠かせなくなった。衆院選で躍進した国民民主党の玉木雄一郎代表は早速、「これまでは自公で了承されれば国会で確実に通るルールだったが、(今後は)自公以外の意見も聞かないと過半数は取れない」とけん制する。
時の首相も口出しができない「聖域」と呼ばれた自民党の税制調査会も例外ではない。14日には、国民民主と年末の税制改正に向けた協議をスタート。同党の求める「年収103万円の壁」見直しの検討を進めざるを得なくなった。
国会審議も様変わりしそうだ。立民の野田佳彦代表は「熟議で決め、議論は公開。国会審議の活性化を促したい」と強調。予算案などに野党の主張を反映させるよう、論戦を通じて政府・与党に迫る構えだ。
今回、立民は衆院の予算委員長や法務委員長などのポストを獲得。審議時間の確保や、政府資料の提出などで、野党の要求が通りやすい環境が整った。自民内で慎重論の根強い選択的夫婦別姓の実現や、同性婚の法制化などの議論が、野党の主導で進むことも想定される。
[時事通信社]