【ニューデリー時事】日本が官民を挙げインド人材の確保に力を入れている。留学生やITを軸とした高度人材だけでなく、製造業など労働力不足に悩む業界の担い手としても期待が高まっている。
◇裾野拡大
「多くの日本の大学は最も優秀で賢い学生や研究者を招きたいと強く望んでいる」。10月中旬、ニューデリーで開かれた「第3回日印大学等フォーラム」に登壇した北海道大の宝金清博総長はそう強調した。
日印合わせて70を超える大学・研究機関のトップらが出席。連携拡大に向けトップ同士による面談も行われた。今回初めてインドで開かれた。主催した科学技術振興機構の担当者は「優秀な大学はIIT(インド工科大)だけでなく、私立や地方にもある。裾野を広げるために来る必要があった」と狙いを語った。
参加した長岡技術科学大(新潟県長岡市)の宮下幸雄教授は、地元企業からインド出身の卒業生を求める声を聞くと話す。日本に残る留学生は東京など都市部で就職するケースが大半で、「インターンのための航空券や宿泊費を負担する新潟の企業もある。地元に卒業生を入れていきたい」という。同大は既にインドの5大学と交流協定を結んでいる。
◇リピート率9割
一方、近年増えつつあるのがインドからの技能実習生や在留資格「特定技能」の労働者だ。日本初のインド人技能実習生送り出し機関のARMS(愛知県刈谷市)現地法人は2019年以降、約340人の実習生を送り出した。うち直近1年間の人数は約200人で、規模が年々拡大している。実習先の7割は製造業という。
柴田長利副社長は「インド人材は教育レベルが高く、日本語もすぐ覚える。受け入れ側のリピート率は9割と高い」と太鼓判を押す。「インドは国際的に力を強めており、人材を受け入れる日本企業は増えてくる」と語った。人手不足に悩む多くの自治体からも接触があるという。
◇5年で5万人
8月には訪印した額賀福志郎衆院議長がモディ首相と会談。今後5年間でIT技術者を中心に5万人超の人材交流を申し合わせた。昨年末の在留インド人約4万9000人を上回る規模だ。人材交流は近く実施が模索されている日印首脳会談でも議題となる見通し。ただ、「(目標が)大き過ぎる。日本は給料が低過ぎて就労先の第1候補に選んでもらえない」(人材業界関係者)との声もある。
[時事通信社]