【ニューデリー時事】全日空の片桐常弥インド総代表兼デリー支店長は、インド人材の魅力を日本に伝え、受け入れ拡大につなげようと各地を講演などで飛び回っている。日印の人的往来拡大はビジネス機会創出にとどまらず、両国の課題解決にも役立つと力を込める。
きっかけは、新型コロナウイルス禍に伴う航空需要の激減だった。新規需要開拓を模索していたときに、日本での技能実習生に関する報道に触れた。インドの状況を調べると受け入れ件数はわずかで、伸び代を感じた。
一方、インドからの出稼ぎや移民が多い北米は、親族間の往来が需要を下支えしている。このことも踏まえ、インドから実習生や在留資格「特定技能」の労働者を受け入れ、「親族訪問の需要を日印間につくれば着実に根付く」と考えた。
人口14億人超のインドでは若者の就職難が問題となっている。これに対し、「日本は地方を中心に少子高齢化で困っている。地方創生の観点からも質の高い外国人材に働いてもらうことが活力となる」と述べた。
中でも人材の宝庫として注目しているのが、狭い回廊で半島部とつながる北東部だ。日本と食習慣が近いことに加え、顔立ちも似ているため宿泊や介護といった接客業でも日本側の抵抗感が少ない。北東部は産業の集積がなく、首都圏に出稼ぎに行く若者は多い。
片桐氏は「日本語教育を担う先生や学校の不足が課題」としつつ、多言語国家のため外国語習得を苦にしない人が多いことも利点と話す。実際に訪印した日本の関係者は、人材の質を「100%評価している」と太鼓判を押しているという。
全日空は現在インドで首都ニューデリーと商都ムンバイの2都市に就航。コロナ禍で停止したままの南部チェンナイ便の再開が急務だ。人口規模が近い中国大陸で8都市に就航していることに比べると少なく、「ポテンシャルはある」と、路線拡充を目指す考えだ。
[時事通信社]