兵庫県の出直し知事選で、パワハラ疑惑などにより失職した斎藤元彦前知事が再選を果たし、与野党には18日、戸惑いが広がった。SNSを通じた支援が強烈に後押しし、県民の投票行動に影響したとの見立てが多い。「今後の選挙に向けてターニングポイントになる」(立憲民主党幹部)との声もあり、各党は来年夏の参院選や東京都議選へ戦略の見直しを迫られそうだ。
「民意を読めなかった。なぜこういう結果になったのか考えないといけない」。自民党兵庫県連所属の衆院議員は取材にこう語り、分析と対策が必要だとの考えを示した。
自民や日本維新の会、立民を含む全県議は9月、斎藤氏に不信任決議を突きつけた。だが、選挙戦では斎藤氏の街頭演説などを、ユーチューバーらが「権力に対抗する候補」といった位置付けで発信。斎藤氏は2021年の初当選時より25万票余り上積みし、自民の一部県議や立民、多くの首長の支援を受けた次点の前尼崎市長に14万票弱の差をつけた。
自民県連幹部は、斎藤氏の支援者らがLINEグループを作って支持を広げたと説明し、「インフルエンサーの動きを含めてSNS選挙だった。情勢が180度変わった」と強調。立民幹部は「選挙の在り方が根底から覆された。都市部では絶対に影響がある」と危機感を示した。
背景に既成の「権力」への不信感があるとの見方も出ている。自民県連のベテランは「政治家、議会、県庁に既得権があるかのように攻撃される土壌があった」と指摘。維新の地元幹部は「関西のメディアは本気で斎藤氏をたたいた。それが同情を買い、メディア不信もあって斎藤氏有利に働いた」との見方を示した。
有権者の不満がSNSによって特定の候補者への投票につながる構図は、7月の都知事選や10月の衆院選でも見られた。立民の県連幹部は「対策に本腰を入れないと戦えなくなる」と漏らす。共産党の小池晃書記局長は記者会見で参院選と都議選に触れ、「抜本的なSNS(発信)体制の構築に力を注ぐ」と語った。
[時事通信社]