厚生労働省は、一定の収入がある65歳以上の高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金制度」の対象を縮小する方向で調整に入った。現在は賃金と年金の合計が月50万円(2024年度基準額)を超えると年金額を減らす仕組みだが、基準額を62万円や71万円に引き上げる案を軸に検討する。
働きながら年金を受け取れる高齢者を増やし、企業の人手不足の解消につなげる狙い。政府内や与野党間の協議を経て来年の通常国会に提出する年金制度改革の関連法案に盛り込む。
22年度末時点で、働きながら年金を受け取る高齢者は約308万人。このうち約50万人が当時の基準額(47万円)を超えていた。減らされた年金の総額は約4500億円に上る。
高齢者の働く意欲が阻害されないよう、基準額を引き上げる必要があると判断した。制度を廃止する案もあるが、支給額が膨らみ年金財政への影響が大きいことから慎重論が強い。
厚労省はまた、現役世代の高所得者が納める厚生年金保険料の上限引き上げも検討する。保険料を計算する基礎となる「標準報酬月額」の上限を現在の65万円から、75万円か79万円に引き上げる方向だ。年金財政の安定につながる一方、高所得者が将来受け取る年金額も増える。
[時事通信社]