【リオデジャネイロ時事】ペルーとブラジルを歴訪したバイデン米大統領は任期最後となった国際会議で、国際協調の重要性を訴えた。だが、「米国第一」のトランプ次期大統領が米国のかじを再び握ることになり、各国は既に警戒モードに突入。米国の指導力がかすみ始める中、バイデン氏は道半ばにして国際舞台からの退場を余儀なくされる。
「歴史は私たちを見ている。前進を続けるべきだ」。バイデン氏は19日、ブラジル・リオデジャネイロで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の関連会合で、気候変動問題への取り組み継続を主張した。だが、「唯一にして最大の人類存亡の脅威だ」と強調したにもかかわらず、超大国指導者としての威厳や迫力は欠けていた。
各国の視線はバイデン氏を飛び越し、自国優先主義を掲げるトランプ氏の動向に注がれている。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれたペルーでの米中首脳会談では、中国の習近平国家主席がバイデン氏の面前でトランプ次期政権とも「協力を拡大する」と宣言。会談を利用し、トランプ氏へのメッセージを発信した。
トランプ氏は既に対中強硬派を外交・安全保障の閣僚・補佐官に起用する方針を示し、中国に厳しい姿勢で臨む構えを見せる。また、輸入品への一律関税などに言及。「予測不可能」を持ち味とするトランプ外交だけに、各国は警戒心を強めている。
バイデン氏は任期中、米欧主導の国際秩序を揺るがすロシアや中国などの動きに対抗するネットワークの構築に力を注いだ。バイデン外交の「遺産」とも言えるこうした同盟・友好国間の協力関係が、トランプ次期政権下でどのような機能を果たすのか。「米国第一」への対応は、各国が問われる課題となる。
[時事通信社]