【シドニー時事】オーストラリア政府の個人情報保護に関する監視機関「豪情報委員会」は、大手量販店が客の同意を得ず顔認証による防犯システムを運用していたのは違法だとして、停止を命令した。店側は処分を不服として、行政審判所に異議を申し立てた。
情報委の調査によると、ホームセンターをチェーン展開する「バニングス」は2018~21年、国内63店舗で顔認証を実施。十分に告知しないまま、監視カメラで来店者全員の顔を確認し、犯罪やトラブルの履歴があるブラックリスト登載者を割り出すのに使っていた。リスト登載者が来店した場合、退店を求めるなどしていた。顔認証の対象は延べ数十万人に上るという。
情報委は「顔は機微に触れる個人情報だ。来店者が自分の情報を収集されていると気付かない形で運用されており、プライバシー侵害に当たる」と指摘。19日付でバニングスに対し、システム停止やデータの削除を命じた。
これに対しバニングスは「問題ないと判断された人の情報は0.00417秒後に削除した。運用の途中からポスターなどで告知もした」と反論。店が強盗に襲われた映像を公開し、「顔認証は従業員と顧客を暴力や犯罪から守ることが目的だ」と訴えており、行政審判で処分の見直しを求める構えだ。
[時事通信社]