国内での前回の死刑執行から約2年4カ月が経過した。近年はほぼ毎年執行されており、2年を超える空白は異例だ。この間に死刑囚だった袴田巌さんの再審無罪が確定し、識者から死刑制度廃止を含めた見直しを求める声が上がる。
死刑は刑法で定められ、法相の命令を受けて絞首により執行される。刑事訴訟法は判決確定から6カ月以内の命令を規定するが、これは「訓示規定」(法務省)と解釈されている。実際には関係記録などの精査に時間を要するのが通例だ。
同省によると、判決確定から執行までの平均期間は12~21年の10年間の執行分で約7年9カ月。今年10月末時点の確定死刑囚は107人に上る。
国内で最後に執行されたのは秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大元死刑囚に対する2022年7月の死刑。古川禎久元法相の時代で、その後の葉梨康弘、斎藤健、小泉龍司、牧原秀樹各氏は法相在任中に死刑を命じていない。
死刑執行の空白期間が続いている理由は定かではない。この間、葉梨氏が在任中に「法相は死刑のはんこを押すときだけニュースになる地味な役職」と発言し、法相を事実上更迭された。
23年3月には1966年の静岡一家4人殺害事件で死刑が確定していた袴田さんの再審を東京高裁が決定し、袴田さんは今年10月に再審無罪が確定した。法相経験者の一人は「死刑が執行されない理由は何とも言えない」と語った。
一方、袴田さんの無罪確定を受け、死刑制度の見直し論が再燃しつつある。
与野党の国会議員や元検事総長、元警察庁長官らが参加した「日本の死刑制度について考える懇話会」は今月13日、「日本の死刑制度は現状のまま存続させてはならない」との提言を発表。存廃を含めた「根本的な検討」を求め、結論を出すまでの間の執行停止を提唱した。
法務省の有識者協議会も22日、再審請求中の死刑執行停止を含めた再審制度の議論を始めた。
懇話会によると、世界196カ国のうち、事実上を含めて死刑を廃止した国は144カ国。経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国のうち、死刑制度が残るのは日米韓3カ国のみで、韓国は執行を停止し、米国も連邦レベルでは執行停止宣言を行っている。
ただ、日本政府は死刑廃止に否定的な立場を崩していない。林芳正官房長官は14日の記者会見で「罪責が著しく重大な凶悪な罪を犯した者には死刑を科することもやむを得ない。政府として死刑制度廃止は適当でないと考えている」と語った。
[時事通信社]