1994年6月に起きたオウム真理教による松本サリン事件の第一通報者で、自身も被害に遭った河野義行さん(74)が24日、長野県箕輪町で「報道と人権」をテーマに講演した。事件後、捜査や報道で容疑者扱いをされた河野さんは「自分を信じてくれる人をつくってほしい」と訴えた。
河野さんは、容疑者扱いされ、さまざまな嫌がらせを受けるなどした当時の心境について、「今、死ねたら楽だろうなと思ったこともある」と振り返った。そうした毎日を耐えられた理由として、一緒に被害を受けた妻が意識不明でも生きていたことと、友人や会社の同僚が支えてくれたことを挙げた。「孤立した時はつぶされる。世間のほとんどの人は敵だったが、私を知っている人は誰も離れていない」と話した。
報道に対しては、一番に報じなければいけないとの価値観が非常に強いとし、「報道は二番でも三番でもいい。正しく伝わる方が大事だと思う」と注文を付けた。
講演会は、町教育委員会などが主催し、町民ら約350人が参加した。
[時事通信社]