トランプ次期米大統領がメキシコや中国などに対する関税引き上げを表明し、対象国に工場を置く日本企業が打撃を受ける懸念が強まっている。製造業では生産する場所や販売先について、関税の影響が比較的小さい国に移すことを検討する企業が出ているほか、海運など物流面で混乱を警戒する声もある。影響は幅広い分野に及ぶ可能性があり、多くの企業が対応を迫られそうだ。
トランプ氏は25日のSNSへの投稿で、来年1月の就任後にメキシコ製品に25%の関税、中国に対しては10%の追加関税をそれぞれ発動すると宣言した。経団連の十倉雅和会長は26日の記者会見で「本当にそうなれば日本企業への影響は甚大になる恐れがある。注視していきたい」と危機感をあらわにした。
メキシコにはトヨタ自動車やホンダ、日産自動車など日系自動車大手が工場を保有し、米国向けに輸出している。KPMGコンサルティングの轟木光氏は、関税引き上げは製品の利益率の圧迫につながると分析し、日本企業も「関税分を値上げで転嫁するか、メキシコの拠点を米国に移すかの選択を迫られる」と予想する。
ダイキン工業の十河政則会長は26日の会見で、メキシコで生産する米国向けの空調関連製品について「アルゼンチンなど南米向けの仕様に変える案もある」と販売先の変更を視野に入れていることを明らかにした。リコーは関税引き上げに備え、中国での米国向け事務機生産をタイに移管する方針だ。
日本海事センターが公表したデータによると、トランプ氏再選の可能性が一般に意識され始めた7月以降、中国から米国向けの船舶での輸送は前年同月比で2割前後も多い水準で推移。一部で関税上げを見据えた「駆け込み輸送」が発生したとの見方があり、海運業界関係者は「将来的に貿易のパターンに変更が生じる可能性がある」と指摘する。
[時事通信社]