中国政府が日本人向けの短期滞在ビザ免除を30日から再開することで、国内の航空・旅行各社からは観光やビジネス客の増加に期待の声が上がっている。ビザ取得に時間がかかり、日本から中国への旅客数はコロナ禍後も回復が遅れているためだが、需要がどの程度伸びるかは未知数だ。
「手続き面の煩雑さがなくなり朗報だ。中国への渡航が増えると期待したい」。ANAホールディングス(HD)の芝田浩二社長は22日、ビザ免除再開を歓迎した。旅行大手JTBも「観光需要の回復に期待したい」(広報)としている。
中国はコロナ禍の2020年3月、日本人に対する短期滞在ビザの免除を停止。23年以降、シンガポールや欧州など免除対象国を広げたが、日本は対象外だった。政府や経済界の要望もあり、今月22日に免除再開を発表。ビザ無しで滞在できる期間も15日以内から30日以内に延長した。
ビザ免除停止の影響は小さくない。ANAHDによると、傘下のピーチ・アビエーションを除く今月の中国路線の運航便数はコロナ前の19年平均と比べ約5割にとどまった。旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)は「フライトの本数も限られており、ほかの地域と比べると利用客の戻りが遅い」(広報)と指摘する。
日本航空子会社スプリング・ジャパン(千葉県成田市)の柴田晃伸執行役員は、「ビザの手配が必要となったことで、(日本企業の)中国出張への腰が相当重くなった」と話す。
中国経済はコロナ禍後も低迷。日本人学校での男児殺害など凶悪事件も頻発している。ある業界関係者は「工場を閉鎖したり駐在を取りやめたりした企業もある」と指摘。JTBも「免除停止前から中国への観光需要は若干落ちていた」と打ち明ける。各社とも需要を慎重に見極めながら増便やツアーの拡充を検討する方針だ。
[時事通信社]