石破茂首相が29日に衆参両院本会議で行う所信表明演説案が27日、判明した。所得税が課される年収の最低ライン「103万円の壁」について「2025年度税制改正の中で議論し引き上げる」と明言。暫定税率廃止を含むガソリン減税に関し「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」との方針を明確にする。
「壁」見直しとガソリン減税の表現はともに自民、公明の与党と国民民主党の合意をなぞった。演説では衆院の与党過半数割れを踏まえ、今後の政権運営について「他党にも丁寧に意見を聞き、真摯(しんし)に謙虚に取り組む」と強調。税収減を懸念する声に対しては「解決策について結論を得る」と理解を求める。
10月の演説の際に上がった「石破カラーが見えない」との批判も踏まえ、29日の演説では「在日米軍施設・区域の自衛隊による共同使用も進める」と表明。「駐留に伴う諸問題の解決に取り組む」として日米地位協定改定に意欲をにじませる。
一方、首相は、能登半島での地震・豪雨被害について「一刻も早い復旧と創造的復興を一層加速する」と力説。能登の教訓を踏まえ、キッチンカー、トレーラーハウス、トイレカー、温かい食事の迅速な派遣・提供に取り組む方針を打ち出す。
東日本大震災に関しては「東北の復興なくして日本の再生なし」との決意を改めて示す。
看板政策の一つである「地方創生」を巡っては「交付金を当初予算ベースで倍増する」と宣言。「新しいICT(情報通信技術)をフル活用しながら、地方の農林水産業、製造業、サービス業の高付加価値化を進める」と主張する。
また、今夏のコメ不足に触れ、「安定的な輸入と備蓄を確保する」と約束。「闇バイト」に関し「日本社会の中で大切にされてきた価値観・道徳観を揺るがしかねない」と危機感を示し、歯止めをかけるための対策強化を訴える。
12月2日で健康保険証の新規発行が終了することに触れ、「国民の不安に迅速に応え、丁寧に対応する」と呼び掛ける。北朝鮮による日本人拉致問題に関しては「国家主権の侵害だ」と非難し、「私自身の断固たる決意の下、解決に取り組む」と強調する。
[時事通信社]