野村証券は3日、元社員(懲戒解雇)が顧客に対する強盗殺人未遂などの罪で起訴された事件を受け、奥田健太郎社長(野村ホールディングスグループ最高経営責任者)が役員報酬30%を3カ月分、自主返上すると発表した。他の役員9人も報酬20~30%を3カ月分返上。元社員の管理者は厳正処分した。
大手証券社員が営業行為に絡む重大事件で起訴されるのは極めて異例。事態を重視し、役員の責任を明確化した。
奥田氏は東京都内の本社で記者会見し「被害者、多くの関係者に深くおわびする」と謝罪。「(顧客には)信頼して取引いただいており、絶対にあってはならない事態だ」と述べた。ただ、辞任について問われると「考えていない」と否定した。事件後、奥田氏が会見を開くのは初めて。
野村証券によると、元社員は2018年4月に新卒で入社し、22年4月から広島支店で営業を担当。今年7月下旬に顧客だった広島市の高齢夫婦宅に放火して現金を奪ったとして、強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪で逮捕、起訴された。
事件当時は承認を得ずに休日、顧客宅を訪問していた。元社員が担当していた200超の証券口座で被害は確認できなかったという。
同社は再発防止策を発表。顧客宅訪問時の管理職による顧客への確認、社貸与の携帯電話のモニタリング強化などを徹底するとした。
野村証券は、国債先物取引で相場操縦を行ったとして金融庁から10月末に課徴金納付命令を受けるなど不祥事が相次いでいる。事案の続発について奥田氏は「真摯(しんし)に受け止めている」と語った。
[時事通信社]