【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領による非常戒厳の宣言から10日で1週間を迎えた。検察は9日、戒厳令を出すよう助言したとされる金龍顕前国防相について内乱と職権乱用の容疑で逮捕状を裁判所に請求。聯合ニュースによると、尹氏を内乱の「首謀者」と認定したとみられ、事情聴取や強制捜査に踏み切る可能性が高まっている。
裁判所が10日、金氏の逮捕状の審査を行った。検察は金氏が内乱の首謀者ではない重要任務の従事者だったとして「尹氏と共謀して内乱を起こした疑いがある」と逮捕状に明記した。
一方、国会は、独立した特別検察官に非常戒厳を巡る内乱事件を捜査させる法案を可決した。野党提出の法案だが、与党「国民の力」から23人が賛成した。
刑法は憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした場合に内乱罪を適用すると規定。首謀者と重要任務従事者、同調者の3段階に分けて処罰し、首謀者には死刑または無期懲役、無期禁錮を科すと定める。検察は金氏が尹氏と共に、戒厳司令官を担った朴安洙陸軍参謀総長、呂寅兄前軍防諜(ぼうちょう)司令官らと共謀したとみる。
金氏らの指示で戒厳軍は国会に進入し、非常戒厳を解除する決議が成立するのを防ごうとしたとされる。検察は憲法で規定された国会の権限行使を不可能にし、憲法秩序を乱したと判断している。
10日の国会審議では尹氏が直接作戦の状況を確認していたとの証言が出た。国会への軍投入を指揮した郭種根陸軍特殊戦司令官は「部隊がヘリで向かっている状況で大統領から電話があり、どこに向かっているか聞かれた。国会に移動中と答えた」と説明した。
金氏らが政治家の拘束を計画していた疑いもある。軍防諜司令部の捜査団長は国会で、戒厳令に際して政治家を拘禁できる施設があるか確認するよう「呂氏から直接指示された」と報告した。
憲法は、内乱罪について、大統領が在職中に訴追を免れる「不訴追特権」の例外と規定する。警察や政府高官らの不正を扱う「高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)」も捜査しており、尹氏への包囲網が狭まる。法務省は9日、尹氏の出国禁止処分を決めた。
[時事通信社]