【イスタンブール時事】シリア反体制派の統一政治組織「シリア国民連合」のディマ・ムーサ副議長は10日、アサド政権崩壊を導いた反体制派の主力でイスラム過激派の流れをくむ「シャーム解放機構」(HTS、旧ヌスラ戦線)について「シリアの将来を話し合うパートナーかどうか、政治的な振る舞いを見極める必要がある」と慎重な見方を示した。一方で、平和かつ民主的な国家実現のため「全てのシリア人が政治的に連携すべきで、私たちも支援する用意がある」と強調した。
トルコ最大都市イスタンブールで時事通信の取材に応じた。「シリア国民連合」は内戦勃発後の2012年に設立され、「シリア国民の正統な代表」として米国など国際社会の多くから承認されている。
ムーサ氏は、政治組織である国民連合と軍事組織のHTSの間には「ハイレベルの接触はない」と説明。ただ、政権打倒を導いた反体制派の進攻では「国民連合と連携する勢力も軍事作戦に参加した」と主張した。
アサド政権については「国家を人質にして、公的地位に就くために最も必要なものを縁故主義や賄賂、汚職にした」と非難。「われわれは半世紀以上、正常な環境の下で政治を行うことができなかった。適材適所を徹底する必要がある」として、新生国家づくりでは「他の方法で国民を抑圧する新政権に取り換えてはならない」と訴えた。
シリアでは10日、HTSの拠点だった北西部イドリブ県を統治していた「シリア救国政府」を率いるムハンマド・バシル氏が暫定首相に指名された。ムーサ氏は「イドリブはイスラム教スンニ派が大半の保守的な地域で、救国政府の統治には幾つかの問題もあった」と指摘。「シリアはもっと多様であり、イドリブでの手法を持ち込んでしまうことで、さらなる混乱や暴力を招かないか懸念している」と述べた。
ムーサ氏は1978年生まれで、シリア中部ホムス出身。今後は国民連合も首都ダマスカスへ拠点を移す見通しで、「シリアに戻ることが待ちきれない」と期待を示した。
[時事通信社]