シリアで50年以上続いたアサド父子による独裁政権の崩壊に伴い、首都ダマスカス郊外のサイドナヤ刑務所などに政治犯として投獄されていた人々が解放された。同刑務所では、3万人以上が処刑や拷問などで殺害されたとの指摘もあり、前政権の残虐な反体制派弾圧が明らかになりつつある。
中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、反体制派の救助団体「シリア民間防衛隊(ホワイトヘルメッツ)」はアサド政権が崩壊した8日、同刑務所から受刑者2万人以上を解放した。オーブンの中から遺体が見つかるなど、日常的に処刑が行われていた形跡も。同団体のラエド・サレハ代表は「刑務所ではなく大虐殺の現場との印象を受けた」と語った。
受刑者の証言から、特殊な暗号の入力が必要な部屋や秘密の地下室があることも判明。投獄されていた肉親を捜す市民も多く詰め掛け、床や壁を壊しての捜索が続いた。
ホワイトヘルメッツは声明で、警察犬を伴って通気口やごみ処理施設などを探したが、隠し部屋や地下室にたどり着けなかったと報告した。AFP通信によると、隠し部屋を記した地図や収容者リストを入手するため、アサド前大統領に圧力をかけるよう亡命先のロシアに求めたという。
サイドナヤ刑務所拘束者・行方不明者協会は2022年、シリア内戦が始まった11年からの7年間で3万人以上が処刑や拷問、飢えや医療措置の欠如のため刑務所内で死亡したと指摘。「大量失踪、組織的な拷問と殺害」があったと批判した。
サイドナヤの他、中部の観光地パルミラに近いタドムル刑務所の悪名もとどろく。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは報告書で、同刑務所を「残忍性、絶望、人間性喪失の同義語」と表現していた。
[時事通信社]