大手生命保険会社が国内生保事業への依存から脱却しようとする動きが鮮明となっている。人口減少などで従来型ビジネスの停滞が見込まれる中、各社は高成長が期待できる海外市場や非保険分野に活路を求め、出資や買収を活発化させている。
「2035年に基礎利益を(現在の2倍の)1.4兆円にしたい。実現には海外への展開が必要だ」。日本生命保険の清水博社長は11日発表した米系生保レゾリューションライフ買収の記者会見で、成長の軸足を海外に移す姿勢を明確にした。
日本生命は今月、米生保大手コアブリッジ・ファイナンシャルに約5850億円を投じ、持ち分法適用会社としたばかり。国内でも6月に介護保育事業を手掛けるニチイホールディングスを買収。3件合わせた投資額は約2兆円に上るが、35年までに4兆円程度の投資を想定しており、さらなる買収に意欲を示す。
他生保でも近年、同様の動きが相次ぐ。第一生命ホールディングス(当時は第一生命保険)は15年に米生保プロテクティブを約5750億円で傘下に収め、その後も米国市場で1000億円超の買収を重ねている。国内では今年、福利厚生サービスを手掛けるベネフィット・ワンを買収した。
明治安田生命保険も来年実施予定の買収を含め、16年以降で4件、計1兆円超を米生保に投資。住友生命保険も16年に米生保、24年までにシンガポール生保にそれぞれ約4000億円超を投じて傘下に収めた。
海外や非保険事業への進出には一定のリスクも伴うが、ある大手生保幹部は「国内生保事業の縮小均衡は避けられない」と危機感を募らせる。ただ、国内市場に注力してきた大手生保には海外事業を担う人材が乏しく、育成も急務となっている。
[時事通信社]