経済産業省が17日公表した次期エネルギー基本計画の原案では、原発について、2011年の東京電力福島第1原発事故後から掲げてきた「可能な限り依存度を低減する」との記述が削除され、最大限活用する方針が示された。原発政策の大きな転換に対し、福島県民からは「脱原発へ努力を」「ぶれぶれだ」などの声が上がった。
葛尾村で畜産業を営む吉田健さん(50)は事故当時、他の家族が避難する中、牛の世話のため父親と村に残ったという。原発活用には「仕方がない。相当反対もあると思うが、分かった上で決めたのだろう」と一定の理解を示した一方、「家族が一時的に離れ離れになり、家畜と向き合う立場として大変な思いもした。事故を二度と繰り返さない努力、最終的に脱原発へと向かう努力はしてほしい」と訴えた。
相馬市の水産加工卸業、佐藤智紀さん(42)は「元から原発をなくす考えはなかったのでは」と批判。「電力供給は厳しいと思うので正直、原発反対ではない」としつつも、「時間がたったから大丈夫、と方針が変わるのはぶれぶれだ」と不信感をあらわにした。
内堀雅雄知事は16日の定例記者会見で「原発の過酷な事故の現状と教訓を踏まえること、住民の安全安心の確保を最優先にすべきことを政府に今後も繰り返し求めていく」と強調した。
[時事通信社]