日銀は19日の金融政策決定会合で、追加利上げを見送った。経済・物価動向はおおむね日銀の想定通りに推移しており、年明けの次回会合以降は今夏に続く再利上げが視野に入るが、2025年春闘の行方や米国の経済政策など不透明感が根強い。円安による物価高も懸念される中、日銀がいつ利上げに踏み切るかが焦点となっている。
「次の利上げの判断に至るには、もうワンノッチ(1段階)欲しい」。植田和男総裁は19日の記者会見で、来年1月20日に就任するトランプ次期米大統領の経済政策や、賃上げに向けた勢いをもう少し見極めたいと胸の内を明かした。
次回会合はトランプ氏が大統領に就任する直後の1月23、24日に開かれる。植田氏は、トランプ氏が主張する高関税政策などが世界経済に与える影響について「不確実性が大きい」などと発言。東京外国為替市場では植田氏が利上げに慎重だと受け止め、円相場は会見開始直後に比べ一時、2円弱も急落して1ドル=156円台後半を付けた。
日銀が来年1月も利上げを見送れば、3月まで会合は予定されていない。1月会合でどの程度、米経済政策の不透明感が払拭できるかは未知数だ。賃上げに関しても、植田氏は次回会合までに十分な材料が集まるか「現時点では予想しがたい」と指摘した。
ただ、今回の会合で、金融正常化に積極的な「タカ派」と目される田村直樹審議委員は0.5%への利上げを提案した。反対多数で否決されたが、日銀内には再利上げ論がじわりと広がっている。
みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは「利上げのタイミングがかなり接近している可能性がある」と指摘。来年1月会合で政策変更に踏み切ると予想する。
[時事通信社]