自民、公明両党は2025年度与党税制改正大綱で、防衛力強化のための増税のうち、法人税とたばこ税は26年4月から実施する方針を決めたものの、所得税の開始時期決定は先送りした。野党の国民民主党と協議を進めている「年収103万円の壁」見直しに向けた所得税減税と整合性が取れず、世論の理解を得られないと判断したためだが、安定した財源確保には不安が残ったままだ。
法人税は26年4月から防衛特別法人税(仮称)を新設。法人税額から500万円を引いた額に税率4%を付加する。たばこ税は26年4月から加熱式たばこの税率を引き上げ、紙巻きたばことの税負担の差を解消。さらに、たばこ全体の税率を27年4月、28年4月、29年4月の3段階で1本当たり0.5円ずつ上げる。
所得税については増税開始時期を示さず、「『103万円の壁』引き上げ等の影響も勘案しながら、引き続き検討する」として、来年以降に結論を持ち越した。政府の原案では27年1月から所得税額に1%を上乗せし、代わりに東日本大震災の復興財源に充てる「復興特別所得税」の税率を1%下げる計画だった。
防衛費の増額は岸田政権下の22年末に決まった。厳しさを増す安全保障環境を踏まえて23~27年度の防衛費総額を43兆円程度と定め、財源の一部として法人、たばこ、所得の3税を増やし、27年度までに1兆円強を確保する計画を閣議決定。具体的な増税開始時期は決めていなかった。
自民の宮沢洋一税制調査会長は「法人税収とたばこ税収で1兆円程度は確保できる」との認識を示した。だが、先の衆院選では自公が大敗し、国民に負担を求める議論のハードルは上がっている。少数与党として政策ごとに野党との連携が必要だが、国民民主なども増税には慎重で、所得増税の議論は来年も難航する可能性がある。
[時事通信社]