Infoseek 楽天

「友人に助けられ、今がある」=妻子失った男性、村長として奮闘―インドネシア・スマトラ沖地震から20年

時事通信 2024年12月21日 14時58分

 【バンダアチェ(インドネシア)時事】2004年12月に起きたインドネシア・スマトラ沖地震・インド洋大津波から間もなく20年。スマトラ島最北端に位置し、大きな被害が出たアチェ州で村長を務めるアルタ・ザイニさん(62)は、妻と当時6歳だった長女を津波で失った。「数カ月間は何もする気が起きなかったが、友人に助けられた」と当時を振り返る。

 ◇人口は回復

 家族を亡くし悲嘆に暮れるアルタさんに友人が手渡してくれたのは、1冊の啓発書。その本から立ち直るきっかけをつかみ、05年に自治会長になると、08年には州都バンダアチェの北部沿岸地区にあるランプロ村の村長となった。

 村の主な産業は漁業だったが、アルタさんは干物やジャーキーといった加工品生産のほか、ナマズの養殖などを奨励。住宅も海外からの援助で、大半がコンクリートなどを使ったものに建て替えられた。潮位の変化を住民に知らせる津波タワーも完成。大津波で6000人から1500人に減った村の人口は、5500人にまで回復したという。

 村には、津波で運ばれた船を屋根の上に乗せたままの家屋がある。アルタさんは「モニュメントとして残したが、地域経済を支える観光スポットにもなった」と説明。こうした取り組みを含む実績が評価され、インドネシアで最も優れた村長にも選ばれた。

 ◇残る課題も

 「大津波が神から与えられた試練、そして人生をやり直すための機会だったと、ようやく思えるようになった」とアルタさん。津波避難訓練は定期的に実施しつつも、「さまざまな災害ノウハウを持つ日本から学ぶことも大切だと思う」と付け加えた。

 だが、災害から20年が過ぎ、課題や問題点を指摘する声も聞かれる。アチェ災害管理局のボビィ・シャフートラ局長(50)は「被災地の再建計画で沿岸から3キロ以内の居住を規制しているにもかかわらず、守られていない」と指摘。民間財団からは「アチェ州で10~23年に災害リスクに関する教育が行われた学校は約150校で、全体の2%にすぎない」と、防災教育の遅れに対する懸念が出ている。 

[時事通信社]

この記事の関連ニュース