【ニューヨーク時事】カナダで少数与党の自由党を率いるトルドー首相(52)が退陣の瀬戸際に追い込まれている。トランプ次期米大統領による高関税の「脅し」が引き金となり、側近の閣僚が辞任。勢いを増した野党は来月再開する議会で不信任案を提出する意向で、可決される公算が大きくなっている。
「この数週間、あなたと私はカナダが進むべき最善の道について対立してきた」。2015年のトルドー政権発足後、一貫して同氏を支えてきたフリーランド副首相兼財務相は16日、SNSでトルドー氏宛ての「絶縁状」を公開し、電撃辞任を発表した。
きっかけは、トランプ氏がカナダからの輸入品に25%の高関税を課すと表明したことだった。フリーランド氏は「関税戦争に備えて資金を温存する必要がある」として、トルドー氏が最近打ち出した支持率向上のための減税策などに反対。対してトルドー氏はトランプ氏との先月の会談にフリーランド氏を同行させず、今月13日には財務相を辞めるよう要求。代わりに事実上降格となるポストを打診したため、抗議の辞任を招いた。
「ポスト・トルドー」の一人と目されてきたフリーランド氏の離反はカナダ政界に衝撃を与えた。トルドー氏は20日、急きょ内閣改造を実施。新閣僚8人を加えて求心力の維持に努めたが、同日、政権に近かった野党の新民主党(NDP)が「首相は辞任すべきだ」と突き放し、来月27日に再開する議会で不信任案を提出すると明らかにした。
トルドー氏は近年、物価上昇や住宅不足などの問題で支持率が低迷。調査会社イプソスが20日に公表した世論調査では、自由党の支持率はNDPと並んで20%にとどまったのに対し、最大野党の保守党は45%と25ポイントの大差をつけた。
トルドー氏は先月末に米南部フロリダ州に飛んでトランプ氏と会談。今月17日には政権として国境警備強化に13億カナダドル(約1500億円)を投じると発表し、トランプ氏が問題視する不法移民や薬物流入に対応する姿勢を示したが、当のトランプ氏は「カナダ人の多くは米国の51番目の州になりたがっている」とやゆするなど、トルドー氏を翻弄(ほんろう)し続けている。
[時事通信社]