【ワシントン時事】トランプ次期米大統領がデンマーク領グリーンランドの領有に再び意欲を示した。デンマーク側はこれをすぐに拒絶。トランプ氏はパナマ運河を再び米国の管理下に置くことを示唆したばかりで、真意は不明ながら、就任を前に「領土的野心」をむき出しにしている。
トランプ氏は第1次政権下の2019年にもグリーンランドの買収を主張し、デンマークのフレデリクセン首相に「ばかげている」と一蹴された経緯がある。これを受け、トランプ氏のデンマーク訪問は中止となった。
今回の発端は今月22日のトランプ氏のSNS投稿だ。駐デンマーク大使に元外交官のケン・ハウリー氏を起用すると発表した際、「安全保障と世界の自由のため、米国はグリーンランドの領有と管理が絶対必要だと考えている」と訴えた。
グリーンランドは北極圏にある世界最大の島で、重要鉱物の埋蔵も確認されている。ハウリー氏は「大統領の政策を推進するために欧州に戻る機会に感謝している」と述べた。
これに対し、グリーンランドのエーエデ自治政府首相はSNSへの投稿で「われわれは売り物ではなく、今後も売り物にはならない」と反発。デンマーク政府は米メディアの取材に「米国の新政権と協力することを楽しみにしている」と応じたが、トランプ氏の発言へのコメントは避けた。
来年1月20日に就任するトランプ氏は、同盟国や友好国に相次いで攻撃的な姿勢を見せている。隣国カナダのトルドー首相に対しては「カナダ州のトルドー知事」とやゆ。今月21日には1999年末に全面返還したパナマ運河を再び支配下に収めることを要求した。
パナマのムリノ大統領は「パナマ運河とその周辺の土地は全てパナマに帰属し、わが国の主権と独立に交渉の余地はない」と猛反発。しかし、トランプ氏は運河に米国旗が翻る写真とともに「米国運河にようこそ」と投稿しており、反省のそぶりは見せていない。
相次ぐトランプ氏の領土拡張主義的な発言について、対象国との何らかの「取引」に向けた挑発だとの分析もある一方、米メディアからは「冗談めかした雰囲気は全くない」「100%真剣だ」との指摘も出ている。ロイター通信は「次期大統領が外交上の礼儀作法に縛られない外交政策を追求することを示している」と論評した。
[時事通信社]