上場企業に協調路線の下で経営助言する新たな投資ファンドが始動した。米カーライル・グループ出身の大塚博行氏が立ち上げた「ジャパン・アクティベーション・キャピタル(JAC)」で、10月には初の投資案件として日用品大手ライオンの株式5%弱を数百億円投じて取得。時には経営陣の解任も突き付ける「物言う株主」とは一線を画した手法で投資先の成長戦略実現を目指す。
取材に応じたJACの大塚社長は「規模が大きい上場会社は非公開化という手段をなかなか取りにくい」と指摘。「上場を維持したまま、企業の経営をサポートしていくファンドが必要だ」と立ち上げの狙いを説明した。株式の取得に関しては、金融機関が持つ政策保有株の受け皿となる可能性も示唆した。
投資先企業の株式を5~10%程度取得し、3~4年ほどかけて企業価値を向上させる。大塚氏は経営陣とは協調路線を取るとしており、対決も辞さずに不動産の売却や自社株買いなどによる株主還元を迫る「物言う株主」との違いを強調。実際、ライオンとは企業価値向上に向けたパートナーシップ契約を締結した上で株式を取得した。
投資先には時価総額最大2兆円規模の上場企業を想定。製造業や消費財、リテール業界などを主なターゲットに据える。大塚氏は「海外事業の強化を目指している企業の方が、成長のポテンシャルを高めやすい」と述べた。
JACは今年4月、1号ファンドとして1300億円の運用を始めると発表。投資家には三菱UFJ銀行、日本政策投資銀行、住友生命保険など大手金融機関が名を連ねた。他にもファンドを組成する方針で、最終的な運用金額は約5000億円に上るとみられる。
金融機関にとっては企業統治の形骸化を招きかねないとして金融庁などから売却を求められている政策保有株を、企業の経営や株価に短期的な影響を与えずに譲渡できる可能性がある。大手銀行からは「当該企業から売却を打診された際には是々非々で検討していく」との声も聞かれる。
[時事通信社]