羽田空港(東京都大田区)で1月、日本航空と海上保安庁の航空機が衝突炎上し、海保機の乗員5人が死亡した事故で、運輸安全委員会は25日、調査の中間報告書に当たる「経過報告」を公表した。両機のボイスレコーダーなどを解析した結果、海保機を操縦していた機長と副機長が、ともに滑走路への進入許可を得たと誤認していたと判断した。
一方、海保機と交信していた担当管制官とは別の管制官が、レーダー画面で海保機が滑走路に進入していることに気付いていたことも判明。ただ、事故の回避にはつながらず、運輸安全委は詳しい経緯を分析し、最終報告をまとめる。
報告書によると、管制官の指示を受けた副機長は、C5誘導路の停止位置までの走行と、離陸順位が1番目であることを正しく復唱した。一方、機長は副機長に対し、全てを復唱せず「ナンバーワン」「C5」とのみ確認。さらにその後、滑走路への進入許可を受けていないにもかかわらず、許可後に行うべき離陸前点検を指示したが、副機長が疑問を呈することはなかった。
補助エンジンの不調で出発が遅れ、飛行計画も一部未定だった海保機には、滑走路進入中にも海保の羽田航空基地から無線連絡が入っていた。機長は事故後、「管制官から滑走路進入や離陸許可を得ていた」と説明したが裏付ける証拠はなく、運輸安全委は、事故直前の無線通信や、機長が出発を急いでいたことなどが誤認した原因とみて調べている。
報告書は、管制官の動きも詳述。海保機と交信していた担当管制官は、海保機と日航機を含め5機の離着陸を受け持ち、他に2機の動きも注視していた。一方、別の管制所でレーダー画面を見ていた管制官は、海保機の進入に気付き、日航機が(着陸をやり直す)ゴーアラウンドをしないのかと考えて、担当管制官に「日航機はどうなっているのか」と質問。ただ意図は伝わらず、15秒後に両機は衝突した。
日航機の機長らも、衝突直前まで海保機の存在を認識しておらず、運輸安全委は3者の対応が重なって事故が発生したと判断。今後、詳しい分析を進める。
経過報告を受け、中野洋昌国土交通相は「航空の安全・安心の確保は極めて重要な課題。痛ましい事故が二度と起こらないよう、航空の安全対策を全力で進める」とする談話を発表した。
[時事通信社]