発生から1年を迎える能登半島地震では、日本語を話せない外国人に地震や避難所の情報をどう伝えるかという課題も浮き彫りになった。地震を受け、各地では通訳付きの避難訓練が行われるほか、外国人に災害情報を知らせるアプリの周知を図るなど対策も進む。
兼六園などの観光名所がある金沢市では、地震発生直後、行き場を失った訪日客約20人が市役所を訪れた。市によると、一部の人は市から毛布を借り、市役所庁舎で一晩を過ごしたという。
市は11月、石川県内で外国人を支援するNPO法人と連携し、訪日客への対応を想定した防災訓練を実施。翻訳ソフトを活用し、訪日客役の参加者から「何が欲しいか」「どこに行きたいか」などと要望を聞き取った。外国人対象の防災訓練は初めてで、同市危機管理課の担当者は「今後も実施したい」と話す。
大阪城がある大阪市中央区は11月、消防や警察と連携し、市内の日本語学校に通う中国やウズベキスタンなど12カ国計139人の留学生を対象とした防災訓練を行った。
同区は日本語学校を「防災パートナー」として登録している。災害時はさまざまな国籍の留学生に災害情報を通訳してもらう仕組みで、11月の訓練では、留学生が区の職員から日本語で聞き取った「電車は動いていない」「トイレは水が出ない」などの情報をそれぞれの母国語で訪日客役の参加者に伝えた。
参加した留学生からは「自信になった」などの声が聞かれ、同区は2025年秋に同様の防災訓練を500人規模に拡大して実施する予定だ。
国も対策に乗り出している。観光庁は緊急地震速報や津波警報などを英語やベトナム語など15言語で通知するアプリ「Safety tips」を14年10月から提供。今年11月下旬からはさらなる利用促進のため、SNSで影響力のある海外インフルエンサー6人に委託し、訪日客向けに同アプリ利用を呼び掛けている。
[時事通信社]