米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設で、政府が軟弱地盤のある大浦湾側で工事に着手してから10日で1年となった。移設に反対する県は「対話による解決」を求めるが、石破政権は応じる姿勢をみせず、沖縄と政府の溝は深まる一方だ。
林芳正官房長官は10日の記者会見で、「(移設工事を)進めていくことが普天間飛行場の危険性除去につながる」と強調。中谷元防衛相も「早期に工事が完了できるよう全力を挙げていく」と語った。
国が県に代わって設計変更を承認する2023年12月の「代執行」を経て、政府は昨年1月に大浦湾側で資材置き場となる海上ヤードの整備を開始。同8月に護岸造成に入り、同12月には軟弱地盤の改良に着手した。金属製のパイプを海底に打ち込み、内部の砂を固めた「砂くい」など約7万本以上を打ち込む工法で、計4年間かかる見通しだ。
石破茂首相は、昨年9月の自民党総裁選で、地元に寄り添う姿勢をアピール。党幹事長を務めた第2次安倍政権は党沖縄県連所属議員らに移設反対の公約を転換させたが、那覇市の演説では「移設は十分に沖縄の理解を得て決めたかといえばそうではなかった」と振り返った。
しかし、首相就任後はこれまでの政権の姿勢と大きな変化はみられない。県が求める知事や官房長官が出席する「普天間飛行場負担軽減推進会議」は2019年以来開かれていない。首相は総裁選で日米地位協定の見直しに言及していたが、玉城デニー知事周辺は「すぐに封印した」と変節ぶりを嘆いた。
政府は供用開始時期について最短で2036年1月と見込むが、大規模な地盤改良の先行きは不透明だ。官邸幹部は今後新たな設計変更が必要となる可能性も「あり得る」と認める。沖縄県側は「非常に看過できない強硬姿勢が続いている」(玉城知事)と政府への反発を強めている。
[時事通信社]