【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領に対する拘束令状の執行を巡り、捜査当局と大統領警護庁の神経戦が展開されている。警護庁の朴鍾俊長官は10日午前、警察に出頭。物理的衝突の懸念も出る中、捜査当局は令状の執行時期を慎重に検討しているもようだ。
出頭した朴氏は記者団に「政府機関同士がにらみ合い、衝突する状況に対する国民の懸念が大きい」と強調した。朴氏は、特殊公務執行妨害の容疑で捜査する警察の出頭要請をこれまで拒否してきたが、一転して3度目で応じた。
朴氏は、高官犯罪捜査庁(高捜庁)や警察などでつくる合同捜査本部が3日、尹氏への拘束令状の執行を試み大統領公邸の敷地に入った際、尹氏の拘束や公邸の捜索を阻んだとされる。朴氏は出頭時、「現職大統領の身分にふさわしい捜査手続きが進められなければならない」と述べ、拘束令状執行に反対する立場を改めて示した。
緊急逮捕の可能性も取り沙汰される中で出頭したことについて、尹氏拘束の不当性と流血の事態への懸念を訴え、保守派の結集と世論の喚起を図ったという見方が出ている。自ら出頭することで、尹氏の拘束令状執行までの時間稼ぎをした可能性も指摘される。
朴氏は10日、大統領の職務を代行する崔相穆経済副首相兼企画財政相に辞表を提出し、受理された。
一方、合同捜査本部は、再発付された尹氏への拘束令状執行に向けた準備を進める。3日には高捜庁30人、警察120人が公邸の敷地に入ったが、警護員らが対抗し5時間半で撤退を余儀なくされた。韓国メディアは、次の執行では警察だけでも1000人余りが動員される見通しだと伝えた。
これに対し、警護庁側は公邸の入り口に鉄条網を設置したり、車両で道を封鎖したりして公邸を「要塞(ようさい)化」(韓国メディア)している。崔氏は声明を出し、「現行の法律では(捜査機関と警護庁の)対立の出口を開くことは難しい」と指摘。打開策として、与野党の合意の下、特別検察官による捜査を認める法律を成立させるよう求めた。
[時事通信社]