「十分に寝た」と感じている人の4割超に睡眠不足が見られる―。筑波大国際統合睡眠医科学研究機構長の柳沢正史教授らは14日、睡眠時間や質の自己評価と脳波測定などによる分析には隔たりがある場合が多いと発表した。自己申告だけで睡眠の状態を判断することは難しく、客観的な計測が重要だとした。論文は米科学アカデミー紀要電子版に掲載される。
調査は国内在住で睡眠障害の治療を受けていない20~79歳の男女計421人を対象に実施した。睡眠の時間や質に関する質問に回答してもらい、自宅で寝た時の脳波と血中酸素飽和度を測定。自己評価とデータに基づく医師の評価の差を分析した。
その結果、睡眠時間について「十分」と回答した人の約45%が実際には睡眠不足の疑いがあった。一方で「寝付けない」などの不眠の訴えのある約66%には客観的な問題がなかったという。
また、睡眠の質を回答した人を「満足」から「とても不満」までの4グループに分け、睡眠障害の一つ「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の疑いのある割合を調べた。軽度を含むSASの疑いのある人は「満足」と答えた人のうち約40%で確認され、治療の必要な中等症以上の人は、いずれのグループにも2割前後の割合で見られた。
柳沢教授は「なぜ自己評価との隔たりが起きるのかのメカニズムは分かっていない」と指摘。「自分の感じている睡眠は当てにならない。一度は客観的な状態を計測してみてほしい」と述べた。
[時事通信社]