第172回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞は安堂ホセさん(30)の「DTOPIA(デートピア)」と鈴木結生さん(23)の「ゲーテはすべてを言った」に決まった。直木賞は伊与原新さん(52)の「藍を継ぐ海」が選ばれた。贈呈式は2月下旬に都内で行われ、正賞の時計と副賞100万円が贈られる。
安堂さんは候補3度目で受賞。作品は、テレビのリアリティーショーを舞台に人種や国籍、セクシュアリティーなど属性の意味を問い直す。芥川賞選考委員の島田雅彦さんは「カラード(黒人)やセクシュアルマイノリティーへの差別や偏見というテーマが、逐一のエピソードにしっかり落とし込まれている」と評価した。
鈴木さんは初候補で受賞。作品は、ドイツの文豪ゲーテの名言に出合った主人公が、その出典を探し求める物語。島田さんは「登場人物がしっかり動き、立体化しているのが魅力。エンタメとして完成度が高かった」と話した。
伊与原さんは候補2度目で受賞。作品は、科学をテーマに絡ませながら多様な人間模様を描いた短編5作を収める。直木賞選考委員の角田光代さんは「一作ごとにテーマが違い、それぞれの土地やそこに暮らす人たちの姿をよく調べて丁寧に描いた」と、伊与原さんの努力をたたえた。
[時事通信社]